海外デスクレポート

2024年11月12日

日本居住者(日本居住企業)の中国不動産の売買について(2024) (中国)

日本居住者(日本居住企業)の中国不動産の売買について(2024) (中国)

日本の居住者が中国の不動産を売買する場合の手続き、必要資料、注意点などを紹介します。相続による不動産の取得については、これとは別に相続手続き(名義変更)が必要となります。

 

【手続きの流れ】

① 情報補足(信息补录/变更)
② 未払税金の清算
③ ネット契約(网签)
④ 資料調達(调档)
⑤ 納税
⑥ 名義変更

 

【必要資料】

① 会社登記簿謄本、公証認証(個人の場合はパスポート)
② 会社法定代表人パスポート、公証認証(個人の場合は不要)
③ 委任状、公証認証(委任の場合のみ必要)
④ 受託人身分証明書/パスポート(委任の場合のみ必要)
⑤ 不動産権利証
⑥ 当初不動産購入時の契約書、契税完税証明(取得原価計算用)

 

【手続きの注意点】

① 情報補足(信息补录/变更)
十数年前に不動産を取得した場合は、都市経済の発展により住所の変更が成されていなかったり、不動産登記センターのシステム上の情報が更新されていない又は登録漏れの可能性があるため、当該手続きが必要となります。

② 未払税金の清算
不動産を保有するだけで毎年固定資産税(房産税)が課税される場合(用途、地域により異なる)があります。未納税金がある場合には、まず過去分、過去分に係る延滞金、進行期分を精算する必要があります。

③ ネット契約(网签)
実際の譲渡双方が締結する売買契約書とは別に、不動産登記センターが用意した売買契約書(网签)について署名が必要となります。

④ 資料調達(调档) 納税

  • 必要資料⑥が手元にない場合は、不動産登記センターで資料開示を受けることができる可能性がありますが、年代が古いと保存されていない可能性もあります。
  • 資料開示請求しても資料がない場合は、資産評価師に当該不動産を取得した時点の価額を評価させることも一つの方法です。

⑤ 納税

  • 納付すべき税目及びそれぞれの計算方法や税率は下表のとおりです。

売手

税目

計算方法

税率

増値税

(譲渡価額 ‐ 譲渡原価)× 税率/譲渡価額 × 税率

免税 ~ 5%

城市維持建設

増値税額 × 税率

1% ~ 7%

教育費附加

増値税額 × 税率

1.5% ~ 3%

地方教育附加

増値税額 × 税率

1% ~ 2%

印紙税

譲渡価額 × 税率

0.05%

土地増値税

(譲渡価額 ‐ 控除項目)× 税率

0% ~ 60%

買手

契税

譲渡価額 × 税率

0% ~ 3%

印紙税

譲渡価額 × 税率

0.05%

※ 売手と買手が個人か会社、居住者か非居住者及び地方政策により、税金の計算方法や税率が上記の表と違う可能があります。

  • 低額譲渡の場合は、税務局より指摘され、税務局が定められた価額で税金を計算する可能性があります。
  • 税金を納付するには、銀行振り込みによることが通常ですが、中国内に口座がない非居住者の場合は、海外口座から直接税務局の口座に振り込むことも可能です。

 

【必要資料の注意点】

① 外国語資料
中国語以外の資料は基本的に認められないため、翻訳が必要になります。

② 公証認証

  • 政府に提出する文書は必ず公証認証をしなければなりません(私文書と公文書により公証認証の方法が異なります)。
  • 2023年10月以前は中国大使館での認証が必要ですが、2023年10月以降はハーグ条約により大使館の認証が撤廃され、日本外務省でアポスティーユを取得することに変わります1
  • アポスティーユは基本的に英語の文書により行われるため、アポスティーユに対する翻訳も必要になります。

③ 翻訳
地方又は資料を提出する機関により、翻訳に対する要求も違います(一般的な翻訳会社、指定翻訳会社、公証役場の翻訳など)。

※1中国の<外国公文書の認証を不要とする条約>締約に伴う大使館における領事認証業務停止のお知らせ_中華人民共和国駐日本国大使館 (china-embassy.gov.cn)

注:上記はあくまで一般的な不動産売買の場合に必要な手続きや資料で、各地方により要求も異なりますので、ご留意いただけますと幸いです。上記記載は北京のケースです。詳しくはお問い合わせください。

 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
  • 大井 高志

    この記事の著者

    大井 高志
    税理士法人山田&パートナーズ パートナー
    亜瑪達商務諮詢(上海)有限公司 総経理
    税理士 公認不正検査士

    2013年山田&パートナーズ入所。大手金融機関への出向後、2016年より上海へ赴任。中国系会計事務所への出向を経て2019年より現職。中国・香港・台湾における組織再編、進出・撤退支援、M&A関連業務、移転価格税制コンサルティング、コーポレートガバナンス、不正調査対応等のコンサルティング業務に従事。

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