1. 国外資産等に関する情報開示制度について
米国市民又は米国居住者等については、外国金融機関に金融資産を保有している場合、外国法人の株式等を保有している場合、米国非居住外国人から相続又は贈与により財産を取得した場合は、IRS等に対しその資産の残高等の情報を開示する必要があります。開示を怠った場合には、厳しいペナルティが課せられるため米国市民又は米国居住者等に該当する場合には、情報開示制度の内容を理解し適切に情報開示を行っていくことが求められます。
2. 外国金融機関等に保有する金融資産に関する情報開示制度
米国外に金融資産を保有する米国市民又は米国居住者等は、所得税の確定申告時に当該金融資産に関する明細書(Form 8938)を申告書に添付して提出する必要があります。また、IRS(Internal Revenue Service)へ提出する申告書とは別にFinCEN(Financial Crimes Enforcement Network)に対しても情報申告書(Form 114)を提出する必要があります。 なお、所得税申告書の提出義務がない場合には、Form 8938については提出する必要がありませんが、Form 114(FBAR)については、所得税申告書の提出義務がない場合でもForm 114(FBAR)の提出要件を満たす場合は申告が必要です。
① Form8938
提出先 |
IRS(Internal Revenue Service) |
提出要件 |
外国金融機関(銀行、証券会社、保険会社等)の課税年度最終日における各口座の合計残高が$50,000(夫婦合算申告の場合は、$100,000)を超える場合、又は、暦年中の各口座の最高残高の合計が$75,000(夫婦合算申告の場合は、$150,000)を超える場合。 ただし、国外居住の米国市民等の場合は、課税年度最終日における各口座の合計残高が$200,000(夫婦合算申告の場合は、$400,000)を超える場合、又は、暦年中の各口座の最高残高の合計が$300,000(夫婦合算申告の場合は、$600,000)を超える場合。 |
報告情報 |
外国金融機関等の名称及び住所、口座種別、口座番号、暦年中の最高残高等。 |
罰則 |
一暦年につき$10,000。ただし、IRSからの通知があってから90日以内に提出しなかった場合は、30日ごとに$10,000、最大$50,000の追加ペナルティ。 |
② Form114(FBAR)
提出先 |
FinCEN(Financial Crimes Enforcement Network) |
提出要件 |
外国金融機関(銀行、証券会社、保険会社等)の暦年中の各口座の最高残高の合計額が$10,000を超える場合。 |
報告情報 |
外国金融機関の名称及び住所、口座種別、口座番号、暦年中の最高残高等の他、外国法人の株式等を保有する場合は、その発行法人の名称、住所等。 |
罰則 |
一暦年につき$10,000。ただし、故意に違反した場合は、$100,000又は一暦年中の各口座の最高残高の50%のいずれか高い金額。 |
3. 外国株式に関する情報開示制度
米国市民又は米国居住者等が、外国法人株式の一定の割合を保有している場合には、所得税の確定申告時に当該外国法人に関する明細書(Form 5471)をIRSへ提出する必要があります。
提出先 |
IRS(Internal Revenue Service) |
提出要件 |
外国法人の議決権の10%以上を取得した場合等 |
報告情報 |
外国法人の名称、所在地、発行済株式数、保有割合等の他、保有割合等が50%を超える場合は、当該外国法人の貸借対照表及び損益計算書に関する情報等。 |
罰則 |
一暦年につき$10,000。ただし、IRSからの通知があってから90日以内に提出しなかった場合は、30日ごとに$10,000、最大$50,000の追加ペナルティ。 |
4. 米国非居住外国人から相続又は贈与により財産を取得した場合の情報開示制度
米国市民又は米国居住者等が、米国非居住外国人から相続又は贈与により一定の金額を超える財産を取得した場合は、当該財産に係る明細書(Form 3520)をIRSへ提出する必要があります。なお、申告期限は、原則として所得税の確定申告期限と同様です。ただし、所得税の確定申告が必要ない場合でも、Form 3520については、提出要件に該当した場合は申告が必要です。
提出先 |
IRS(Internal Revenue Service) |
提出要件 |
非居住外国人から贈与又は相続により$100,000を超える財産を受け取った場合等 |
報告情報 |
取得した財産に係る贈与者又は被相続人の氏名、内容、取得日、時価等。 |
罰則 |
非居住外国人から贈与又は相続により受領した財産に関する報告を怠った場合は、報告が遅れた各月につき取得財産の5%(ただし、最大25%を上限とする)。 |
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
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