ベンチャー投資を促進するための税制措置の創設
速報 平成26年度(2014年度)税制改正解説
1. 改正の概要
法人が一定のベンチャーファンドに出資し、ベンチャーファンドを通じてベンチャー企業の株式等を取得した場合において、一定額の投資損失準備金を積み立てたときは、その積み立てた金額をその事業年度に損金算入することが認められます。
【趣旨】
民間企業から事業拡張期のベンチャー企業への資金供給を拡大する目的で、ベンチャー企業の経営・技術指導を行うベンチャーファンドへ出資する企業に対し、その出資の損失に備えるための税制上の支援措置が設けられる。
適用要件 | 税制措置 | ||
下記の全ての要件を満たす必要がある。 ① 一定のベンチャーファンド(※1)を通じて、一定のベンチャー企業(※2)に出資した青色申告法人(※3)であること ② ベンチャーファンドへの出資時期が、経済産業大臣の認定を受けた日以後であること ③ ベンチャー企業株式等の取得時期が、一定の期間(※4)内であること ④ 一定の期間(※4)内の日を含む各事業年度終了の時において有するベンチャー企業株式等のその終了の時における帳簿価額の合計額の80%以下の金額を、新事業開拓事業者投資損失準備金として積み立てること |
|
〇 平成26年4月1日以後に終了する事業年度に適用
(※1) 産業競争力強化法に規定する特定新事業開拓投資事業計画について経済産業大臣の認定を受けた投資事業有限責任組合。産業競争力強化法の施行日から平成29年3月31日までに認定を受けたもの。なお、当該事業計画は、特定新事業開拓投資事業(※5)の内容・実施時期等、一定の事項を記載し、経済産業大臣の認定を受ける必要がある。
(※2) 産業競争力強化法に規定する新事業開拓事業者
新商品の開発又は生産等、新たな事業活動を行うことにより、新たな事業の開拓を行う事業者(新たに設立される法人を含む。)であって、その事業の将来における成長発展を図るために外部からの投資を受けることが特に必要なものその他一定のものをいう。
(※3) ベンチャーファンドの有限責任組合員に限り、その法人が適格機関投資家である場合にはそのベンチャーファンドに対する出資予定額が2億円以上であり投資事業有限責任組合契約を締結した日を含む事業年度開始の時におけるその他有価証券の帳簿価額が20億円以上であるものに限る。
(※4) 経済産業大臣の認定を受けた日からベンチャーファンドの存続期間終了の日までの期間
(※5) 特定新事業開拓投資事業とは、投資事業有限責任組合が行う新事業開拓事業者に対する投資事業(主として事業規模の拡大を図る新事業開拓事業者に対するものであること等、一定要件に該当するものに限る。)であって、当該新事業開拓事業者に対する積極的な経営又は技術の指導を伴うことが確実であると見込まれるものとして一定のものをいう。
(※6) 認定に係る特定新事業開拓投資事業計画を変更しようとするときは、経済産業大臣の認定を受けなければならない。なお、経済産業大臣は、特定新事業開拓投資事業計画に従って特定新事業開拓投資事業を実施していないと認めるとき等、一定の場合には、その計画の変更の指示又はその認定の取消しをすることができる。
2. 実務上の留意点
- 投資事業有限責任組合(ベンチャーファンド)に対する出資の経理方法について注意が必要。
- 準備金の損金算入には、有価証券の評価損の損金算入のように回収可能性等の要件は別段設けられていない。
- 認定を受けた日以後の出資という記載がされているため、認定前にベンチャーファンドが出資済みの株式等には適用がないと考えられる。
- 準備金は、積み立てた事業年度の翌事業年度に全額を取り崩し益金に算入されるが、継続保有している株式等については、毎期準備金の積み立てをすることで損金算入が可能と考えられる。(準備金の積み立て対象となるベンチャー企業の株式等は、各事業年度終了の時において有する株式等とされているため)
3. 今後の注目点
- 産業競争力強化法は、公布の日から起算して3ヵ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。
(平成26年1月下旬~2月上旬の見込み。)
内容につきましては、「平成26年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
税制改正の最新情報など、山田&パートナーズの税務情報のニュースレター登録は以下から