適格請求書等保存方式(インボイス制度)の導入
速報 平成28年度(2016年度)税制改正解説
1. 改正の概要
- 適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)の導入(平成33年4月1日~)
① 複数税率制度に対応した仕入税額控除の方式として、適格請求書等保存方式が導入されます。
② 免税事業者は適格請求書等を発行することができず、免税事業者からの課税仕入れについては、仕入税額控除の適用を受けられないこととなります(取引先対象から免税事業者が除外される恐れがあるため、平成33年4月1日から平成39年3月31日までは、一定の計算により仕入税額控除の適用を認める経過措置あり)。 - 適格請求書等保存方式が導入されるまでの経過措置(平成29年4月1日~平成33年3月31日)
① 当面の執行可能性に配慮し、適格請求書等保存方式の導入までは、「区分記載請求書等保存方式」により運用されます。
② 複数税率に対応した区分経理が困難な中小事業者や、システム整備が間に合わない事業者等がいることも想定し、税額計算の特例措置が設けられます。
2. 実務上の留意点
- 事業者は複数税率に対応した商品管理や請求書の発行、区分経理が必要となる。
- 経過措置(平成29年4月1日~平成33年3月31日まで)で認められる税額計算の特例の内容確認及び適用検討。
3. 今後の注目点
- 税制改正大綱に記載のある「平成28年度税制改正法案で規定される法制上の措置その他必要な措置」(大綱P13)の内容
【 適格請求書等保存方式の概要(平成33年4月1日~)】
仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として「適格請求書発行事業者(仮称)」から交付を受けた「適格請求書(仮称)」の保存が必要となります。
(1) 適格請求書発行事業者登録制度
免税事業者以外の事業者は、税務署長に申請書を提出し(申請受付は平成31年4月1日から開始)、適格請求書の交付ができる「適格請求書発行事業者」として登録しなければなりません。適格請求書発行事業者は、インターネットを通じて氏名又は名称及び登録番号等が公表されます。
(2)「適格請求書」の記載事項
請求書や納品書等に次の事項を記載しなければなりません。
イ 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
ロ 課税資産の譲渡等を行った年月日
ハ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、その旨)
二 課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率
ホ 消費税額等
へ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
※ 小売業、飲食業、タクシー業などの不特定かつ多数の者と取引を行う場合には、「適格簡易請求書」の交付も認められます。
【 適格請求書等保存方式導入後の税額の計算方法(イメージ) 】
【 仕入に係る税額の計算 】
① 適格請求書の税額の「積上げ計算」( 原則 )
3,000円 + 1,600円 = 4,600円
② 税率ごとの取引総額からの「割戻し計算」
(売上を「積上げ計算」の方法により計算していない場合にのみ適用できる)
33,000円 × 10/110 + 21,600円 × 8/108 = 4,600円
【 売上に係る税額の計算 】①と②の選択
① 税率ごとの取引総額からの「割戻し計算」( 原則 )
33,000円 × 10/110 + 21,600円 × 8/108 = 4,600円
② 適格請求書の税額の「積上げ計算」
(適格請求書等の保存が要件)
3,000円 + 1,600円 = 4,600円
【 適格請求書等保存方式導入までの間の税額計算の特例(経過措置)(平成29年4月1日~平成33年3月31日)】
複数税率(10%と8%)に対応した区分経理が困難な事業者等に対し、みなし割合を用いた簡便な税額計算方法が認められます。
(参考:請求書等のイメージ)
内容につきましては、「平成28年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の財源等を確認する必要がある、相当等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。よろしくお願いします。
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