法人事業税の税率引下げと外形標準課税の拡大
速報 平成28年度(2016年度)税制改正解説
1. 改正の概要
- 外形標準課税の拡大として付加価値割及び資本割の税率が平成27年度改正に続き引上げる一方、所得割の税率は引下げられます。
- 所得割の税率引下げに伴い、資本金1億円超の普通法人の地方法人特別税率が93.5%から414.2%へ引上げられます。
- 外形標準課税の拡大に伴う負担増の軽減措置として平成27年度改正で創設された「法人事業税の税率の改正に伴う負担変動の軽減措置」が拡充されます。
【外形標準課税の対象法人(資本金1億円超の法人)】
(※)外形標準課税の対象外となる資本金1億円以下の法人については改正なし。
【法人事業税率の改正】
改正前 | 改正案 | |||
平成27年4月1日 以後開始事業年度 |
平成28年4月1日 以後開始事業年度 |
平成28年4月1日 以後開始事業年度 |
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付加価値割 | 0.72% | 0.96% | 1.2% | |
資本割 | 0.3% | 0.4% | 0.5% | |
所得割 | 年400万円以下の所得 | 3.1% (1.6%) |
2.5% (0.9%) |
1.9% (0.3%) |
年400万円超800万円以下の所得 | 4.6% (2.3%) |
3.7% (1.4%) |
2.7% (0.5%) |
|
年800万円超の所得 | 6.0% (3.1%) |
4.8% (1.9%) |
3.6% (0.7%) |
|
地方法人特別税率 | 93.5% | 152.6% | 414.2% |
(※1) 所得割の括弧書きの税率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率であり、当該税率の制限税率を標準税率の2倍(改正前:1.2倍)に引上げる。
(※2) 3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人の所得割に係る税率については、軽減税率の適用はない。
○ 平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。
【外形標準課税の拡大に伴う負担増の軽減措置の改正】
<事業税額から控除する金額>
平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | |
付加価値額が30億円以下の法人 | (改正後の税率に基づく事業税−平成28年3月31日現在の税率に基づく事業税) × 3/4 | (改正後の税率に基づく事業税−平成28年3月31日現在の税率に基づく事業税) × 1/2 | (改正後の税率に基づく事業税−平成28年3月31日現在の税率に基づく事業税) × 1/4 |
付加価値額が30億円超 40億円未満の法人 |
(改正後の税率に基づく事業税−平成28年3月31日現在の税率に基づく事業税) × (付加価値額に応じて3/4~0) | (改正後の税率に基づく事業税−平成28年3月31日現在の税率に基づく事業税) × (付加価値額に応じて1/2~0) | (改正後の税率に基づく事業税−平成28年3月31日現在の税率に基づく事業税) × (付加価値額に応じて1/4~0) |
(※1) 平成28年度:平成28年4月1日以後開始事業年度 平成29年度:平成29年4月1日以後開始事業年度 平成30年度:平成30年4月1日以後開始事業年度
(※2) 付加価値額が30億円以下の法人は、3/4 (平成28年度) 、1/2 (平成29年度) 、 1/4 (平成30年度)となり、30億円超40億円未満の法人は付加価値額に応じて、3/4~0 (平成28年度)、1/2~0 (平成29年度)、1/4~0 (平成30年度)となる。
(※3) 平成29年4月1日以後に開始する事業年度から地方法人特別税は廃止し、所得割に復元される。
(※4) 平成29年度、平成30年度も「平成28年3月31日現在の税率」に基づき算定した事業税額と比較する。
○ 平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。
2. 実務上の留意点
- 税負担軽減措置は時限立法であり、その控除割合は段階的に引下げられる。
(平成28年度 3/4 →平成29年度 1/2 →平成30年度 1/4 )
3. 今後の注目点
- 付加価値額が30億円超40億円未満の法人に対する外形標準課税の拡大に伴う負担増の軽減措置における付加価値額に応じた控除割合の具体的な計算方法。
- 平成27年度税制改正で見送られた、中小法人への外形標準課税の適用拡大の可能性。
- 外形標準課税の拡大を踏まえた、分割基準や資本割の課税標準の今後の改正の動向。
内容につきましては、「平成28年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の財源等を確認する必要がある、相当等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。よろしくお願いします。
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