地方法人課税の偏在是正
速報 平成28年度(2016年度)税制改正解説
1. 改正の概要
地方法人課税について、地域間の税源の偏在性を是正し財政力格差の縮小を図るため、以下の見直しが行われます。
- 法人住民税法人税割の税率を引下げ、地方法人税の税率について当該引下げ分相当の引上げをします。
- 地方法人特別税・譲与税を廃止して法人事業税に復元し、法人事業税の一部を市町村へ交付します(特別区相当分については、特別区調整交付金の財源とされます)。
【法人住民税法人税割と地方法人税の税率の改正】
※ 地方法人税は、地域間の税収格差を是正するために導入され、法人住民税法人税割の一部について、再配分を行う。平成26年10月1日以後に開始する事業年度に導入された。
〇 平成29年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。
【法人事業税の改正】
<地方法人特別税・譲与税の廃止>
平成29年4月1日以後に開始する事業年度から地方法人特別税を廃止し、法人事業税に復元する。これに伴い、地方法人特別譲与税は平成30年8月の譲与分をもって廃止される。
<法人事業税交付金制度の創設>
平成29年度から、都道府県から市町村へ法人事業税の一部を交付する制度が創設される。
① 道府県は、納付された法人事業税の5.4%を市町村へ交付する。
② 都は、納付された法人事業税の5.4%を市町村へ交付し、特別区相当分については、特別区財政調整交付金の財源とされる。
③ ①②の市町村に対する支払いについては、従業員数を基準として行う。
【地方法人特別税の改正】
資本金1億円超の普通法人(外形標準課税適用法人)の地方法人特別税の税率が、地方法人事業税(所得割)の税率変更に合わせ、平成28年4月1日以後に開始する事業年度から改正される。(平成29年4月1日以後に開始する事業年度から、地方法人特別税は廃止され、法人事業税に復元される。)
地方法人特別税(※1、2) | 改正前 | 改正案 | ||
平成27年度 | 平成28年度 (※3) |
平成29年度以降 (※4) |
||
外形標準課税適用法人以外の所得割額に対する税率 | 43.2% | 43.2% (変更なし) |
廃止 | |
外形標準課税適用法人の所得割額に対する税率 | 93.5% | 414.2% | 廃止 |
※1 地方法人特別税は地域間の税収格差を是正するために導入され、法人事業税の一部について、地方法人特別譲与税として各都道府県に再配分(譲与)を行う。平成20年10月1日以後に開始する事業年度から導入された。
※2 地方法人特別税額=基準法人所得割額×地方法人特別税の税率
※3 平成28年4月1日以後に開始する事業年度をいう。
※4 平成29年4月1日以後に開始する事業年度をいう。
2. 実務上の留意点
- 法人住民税法人税割の税率引下げと地方法人税の税率引上げが行われるが、合計の税負担は改正前とおおむね同額である。
- 地方法人特別税が廃止され法人事業税に復元されるが、合計の税負担は改正前とおおむね同額である。
3. 今後の注目点
- 消費税率10%時においても、地域間の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小を図る措置を講ずる予定である。
内容につきましては、「平成28年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の財源等を確認する必要がある、相当等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。よろしくお願いします。
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