「攻めの経営」を促す役員給与等に係る税制の整備

速報 平成28年度(2016年度)税制改正解説

1. 改正の概要

  • コーポレートガバナンスが強化されている上場企業等に対し、多様な業績連動報酬や株式報酬の導入を促進して、中長期の企業価値向上のインセンティブを付すことにより、経営者の「攻めの経営」を後押しするための改正が行われます。
  • 欧米で近年発達しているリストリクテッド・ストック(※1)といった新たな株式報酬について、税務上の取扱いが明確になります。
    ① 利益連動給与の算定指標の範囲にROE(※1)その他利益に関連する一定の指標が含まれることが明確化されました。
    ② 将来の役務提供の対価として一定の譲渡制限付株式を交付する場合には、事前確定の届出が不要となり、原則として譲渡制限が解除された日の属する事業年度において損金算入されます。
損金算入される役員給与 要件(改正前) 改正案
定期同額給与
  • 毎月一定額の支給であること
改正なし
事前確定届出給与
  • 支給時期、支給額を事前に税務署長に届出ていること
  • 届出どおりに支給すること
将来の役務提供の対価として一定の譲渡制限付株式を交付する場合には、事前確定の届出は不要となります(※2)
利益連動給与
  • 非同族会社であること
  • 算定方法が有価証券報告書に記載される利益に関する指標を基礎とした客観的なものであること等
算定指標の範囲にROE(※1)その他利益に関連する一定の指標が含まれていることが明確化されます

(※1)後記【参考情報】参照
(※2)原則として譲渡制限が解除された日の属する事業年度の損金の額に算入されます。なお、平成28年4月1日以後に交付の決議がされるものに限ります。

〇 平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。

2. 今後の注目点

  • ROEその他利益に関する一定の指標の具体的な内容
  • 一定の譲渡制限付株式の具体的な内容

【参考情報】

① 用語の解説

  • リストリクテッド・ストック(Restricted Stock):一定期間の譲渡制限が付された株式報酬
  • ROE(Return on Equity):株主資本利益率ともいい、当期純利益÷株主資本により計算される経営効率を判断する指標

② 改正の背景
● 「『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」(2015年6月30閣議決定)
経営陣に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与することができるよう金銭でなく株式による報酬、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とするための仕組みの整備等を図る(P44)

● コーポレートガバナンス・コード(2015年6月1日 株式会社東京証券取引所)
経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべきである(P16)

● 「コーポレート・ガバナンスの実践 ~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」2015年7月24日 経済産業省報告
我が国企業の役員報酬は依然として固定報酬中心であり、業績連動報酬や株式報酬の割合が低いことが指摘されています。欧米においては、中長期のインセンティブ報酬として、Performance ShareやRestricted Stockといった株式報酬制度が普及していますが、これと同様の仕組みを我が国で導入するための手続(金銭報酬債権を現物出資する方法)を整理しています(経済産業省HP)

 

 

 

内容につきましては、「平成28年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の財源等を確認する必要がある、相当等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。よろしくお願いします。

 

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