国家戦略特別区域税制

速報 平成28年度(2016年度)税制改正解説

1. 改正の概要

  • 一定の青色申告法人が、国家戦略特別区域内において一定の設備投資を行った場合の設備投資減税(特別償却又は税額控除)につき、内容を一部見直したうえで、適用期限が平成28年3月31日から2年間延長されます。
  • 新設された一定の青色申告法人が、国家戦略特別区域内において一定の事業を行った場合、設立の日から5年間、所得金額の20%を所得控除できる制度が創設されます。

 

【国家戦略特別区域の設備投資減税の一部見直し・延長】

  改正前 改正案
対象資産
(※1)
機械装置
開発研究用器具備品
(※2)
特定中核事業(※3) 即時償却
又は15%税額控除(※4)
即時償却は廃止
上記以外 50%特別償却
又は15%税額控除(※4)
改正なし
建物、附属設備、構築物(※2) 25%特別償却
又は8%税額控除(※4)
改正なし
繰越税額控除制度 1年間繰越可能 繰越不可

(※1)国家戦略特別区域法に基づく事業実施計画に記載されたものに限る。
(※2)対象資産となる最低取得価額は、資産の種類ごとに、それぞれ以下のとおりである。
① 機械装置 1台又は1基あたり2,000万円以上(特定中核事業(※3)4,000万円以上)
② 開発研究用器具備品 1台又は1基あたり1,000万円以上(特定中核事業(※3)2,000万円以上)
③ 建物、附属設備、構築物 合計1億円以上
(※3)特定中核事業とは、イノベーションにより新たな成長分野を切り開いていくため、特に促進していくべき次の事業をいう。
① 医療分野(先端的技術を活用した医療等)
② 農業分野(革新的な情報サービスを活用した農業の生産性の向上に係る研究開発)
(※4)税額控除は、法人税額の20%を限度とする。

 

【国家戦略特別区域の所得控除の創設】

適用要件 所得控除額

以下のすべての要件を満たす場合

① 国家戦略特別区域の指定日以後に新設された同区域内に本店等を有する青色申告法人
(担当大臣から指定をされた一定の法人に限る)
② 専ら特定事業(※1)を営むものであること
③ 国家戦略特別区域外で事業を営む場合、一定の補助的な業務(※2)を行う小規模なもの(※3)であること
④ 国家戦略特別区域内において専ら対象事業を行うこと(一定の派生業務は可能)等

所得金額の20%
(設立の日から5年間適用可能)

(※1)国家戦略特別区域法の規制の特例措置が重要な役割を果たす事業で、医療、国際及び農業分野の事業、インターネット等を活用した一定の研究開発事業等
(※2)調査、広告宣伝等の業務(補助的なものに限る)
(※3)国家戦略特別区域外の事務所に勤務する従業員の数の合計が、その法人の常時使用する従業員の20%以下であること

〇 国家戦略特別区域法の改正法の施行日から平成30年3月31日までの間に国家戦略特別区域の担当大臣の指定を受けた法人に適用される。

2. 実務上の留意点

  • 同一事業年度において、国家戦略特別区域の設備投資減税と所得控除の併用はできないため、事前の検討が必要となる。
    (国際戦略総合特別区域における設備投資減税及び特別控除との併用も不可)

3. 今後の注目点

  • 国家戦略特別区域法の改正法の施行日とその内容
  • 所得控除の適用要件である「一定の派生業務」の内容

【参考資料】国家戦略特別区域について

<国家戦略特別区域の定義>
その区域において、産業の国際競争力の強化に資する事業又は国際的な経済活動の拠点の形成に資する事業を実施することにより、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展に相当寄与することが見込まれる一定の地域

 

<これまでに指定された区域>
1. 第一次指定(平成26年5月1日指定)
① 東京圏(東京都、神奈川県、千葉県成田市)※ 東京都の区域については平成27年8月28日に東京都全域に拡大
② 関西圏(大阪府、兵庫県、京都府) ③新潟県新潟市 ④兵庫県養父市 ⑤福岡県福岡市 ⑥沖縄県

2. 第二次指定(平成27年8月28日指定)
①秋田県仙北市 ②宮城県仙台市 ③愛知県

3. 平成27年12月15日に行われた国家戦略特別区域諮問会議において、以下の地域の追加が決定され、今後政令により指定予定
①広島県 ②愛媛県今治市 ③千葉県千葉市 ④福岡県北九州市

 

<区域計画の認定>
区域計画は、国家戦略特別区域ごとに、国・地方自治体・民間の三者から組織される国家戦略特別区域会議において、協議・作成され、内閣総理大臣が認定する。
区域計画が認定されると、当該国家戦略特別区域において、規制の特例措置の適用を受けた事業等の実施が可能となる。

 

 

内容につきましては、「平成28年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の財源等を確認する必要がある、相当等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。よろしくお願いします。

 

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