研究開発税制の見直し

速報 平成29年度(2017年度)税制改正解説

1. 改正の概要

  • 第4次産業革命の実現を推進するため、試験研究費の範囲について、一部追加されます。
  • 「総額型」の税額控除率が見直され、売上高対比の研究開発費割合でなく、研究開発費の増減率に応じた減税の仕組みとなります。
  • 中小企業者等が取り組む研究開発については、手厚い減税措置が講じられています。
  • 上乗せ措置である「試験研究費の増加額に係る税額控除(増加型)」が廃止されます。
  • 上乗せ措置である「平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除(高水準型)」の適用期限が、2年間延長されます。
内容 改正前 改正案
試験研究費の範囲 製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する原材料費、人件費及び経費のほか、他の者に試験研究を委託するために支払う費用などの額 左記に加えて「対価を得て提供する新たな役務の開発(新サービス開発)に係る試験研究のために要する一定の費用」を追加
例)IoT、ビッグデータ、人工知能等
税額控除率
(総額型)
  • 試験研究費割合が10%以上の場合
    10%
  • 試験研究費割合が10%未満の場合
    8%+ (試験研究費割合 × 0.2)
  • 増減割合が5%超
    9%+(増減割合-5%)×0.3
  • 増減割合が5%以下
    9%-(5%-増減割合)×0.1
  • 増減割合が-25%未満 
    6%
    ※控除率の上限は14%(2年間の時限措置終了後は10%)
    ※増減割合=試験研究費増減差額/比較試験研究費
中小企業技術基盤強化
税制における
① 税額控除率
② 控除限度額
① 税額控除率
12%
② 控除限度額
法人税額×25%
試験研究費の増加割合が5%を超える場合
(2年間の時限措置)
① 税額控除率
12%+(増加割合-5%)×0.3
※ 控除率の上限は17%
② 控除限度額
法人税額×35%
※上乗せ措置の高水準型(次頁参照)と選択適用
上乗せ措置 <増加型>
税額控除額
=増加試験研究費の額×増加割合(5~30%)
廃止

<高水準型>
試験研究費の額のうち平均売上金額の10%超の部分×控除率

※ 控除率=(試験研究費割合-10%)×0.2

ただし、法人税額×10%を限度とする。

左記の高水準型
又は
総額型の控除限度額に下記を上乗せ
法人税額×(試験研究費割合-10%)×2

ただし、総額型の控除限度額の上乗せについては、法人税額×10%を上限とする。

特別試験研究費の対象 ① 共同研究及び委託研究に係る相手方が支出する費用で自己が負担するもの
  • 原材料費、人件費、旅費、経費及び外注費に限定

① 同左
→限定列挙の廃止

② 契約変更前の支出費用
その契約に係るものであり、かつ、支出日と契約変更日が同一の事業年度内にある場合、特別試験研究費の対象となることを明確化

〇 平成29年4月1日以後に開始する事業年度に適用する。

2. 実務上の留意点

  • 試験研究費の定義の見直しにおいて、IoT、ビッグデータ、人工知能等を活用した第4次産業革命型の高付加価値サービスの開発が新たに加わることにより、同事業を行っている企業は研究開発税制の優遇を受けやすくなる。
  • 特別試験研究費の額に係る対象範囲の拡大及び条件の緩和化により、オープンイノベーションを促進している企業は研究開発税制の優遇を受けやすくなる。
  • 研究開発税制について、適用に係る申告要件を満たす場合、税額控除額を変更でき、税務署長が増額更正をする場合において、連動的に税額控除額を増加できる。(外国税額控除制度も)(所得税についても)

h01_図1

 

 

内容につきましては、「平成29年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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