少数株主の整理による完全子法人化の課税関係の見直し

速報 平成29年度(2017年度)税制改正解説

1. 改正の趣旨

次の方法による完全子法人化については、株式交換と同様に組織再編税制として位置づけられ、適格要件を満たすかどうかにより、課税関係が整理されます(改正内容は下表)。

  • 全部取得条項付種類株式の端株処理
  • 株式併合の端株処理
  • 株式売渡請求

 

対象となるスキーム例】

① 全部取得条項付種類株式の端数処理による完全子法人化

h07_図1

 

② 全部取得条項付種類株式の端数処理による完全子法人化(連結納税制度を導入している場合)

h07_図2

適格要件※ 区分 改正案による課税の取り扱い (太字が改正内容)
満たす 単体
  • 課税なし
連結
  • 完全子法人の連結納税の開始又は加入時に伴う資産の時価評価制度の対象から除外する。
  • 完全子法人の連結納税の開始又は開始の前に生じた欠損金額を連結納税制度下での繰越控除の対象に加える。
    (個別所得金額を限度とする)
満たさない 単体
  • 非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産の時価評価制度の対象として課税される
連結
  • 完全子法人の連結納税の開始又は加入時に伴う資産の時価評価制度の対象として課税される。
  • 完全子法人等の連結納税の開始又は加入前に生じた欠損金額は切り捨てられる。

※ 適格要件に関して、大綱においては「企業グループ内の株式交換と同様の適格要件」と記載。
(参考:現状の企業グループ内の株式交換の適格要件(概要))

  • 以下の(イ)又は(ロ)のいずれかの要件を充足すること
    (イ)株式交換前のいずれか一方の法人による支配関係が、株式交換後も継続する見込みであること。
    (ロ)株式交換前の同一の者による支配関係が、株式交換後も継続する見込みであること。
  • 完全子法人の株式交換直前の従業者の概ね80%以上の者が、引き続き業務に従事することが見込まれること。
  • 完全子法人の株式交換前の主要な事業が引き続き営まれることが見込まれること。

〇平成29年10月1日以後に行われる組織再編成について適用される。

2. 実務上の留意点

  • 適格株式交換の要件を満たさない場合には、非適格株式交換同様、完全子法人等の資産が時価評価の対象となる。
  • 連結納税制度を利用している状況下で少数株主を整理する際の課題としてあった、連結の開始等に伴う時価評価課税や繰越欠損金の切捨てについては、適格要件を満たすことで回避することができる。

 

 

 

内容につきましては、「平成29年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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