研究開発税制の見直し
速報 平成31年度(2019年度)税制改正解説
1. 改正の概要
(1) 総額型
① 研究開発投資の質と量の向上を促すため、研究開発を行う一定のベンチャー企業について、控除税額の上限を法人税額の40%(改正前25%)に引き上げる。② 増加インセンティブを強化する観点から総額型の税額控除率が見直され、試験研究費の増減率が+0%~+8%の範囲の場合は税額控除率は増加、試験研究費の増減率が▲25%~0%の範囲の場合は税額控除率は減少。
③ 制度の簡素化の観点から上乗せ措置である「平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除(高水準型)」が改組され、税額控除率を一定程度割増しする措置を加え、総額型に統合される。
(2) オープンイノベーション型
質の高い研究開発に対する支援を強化する観点から、対象範囲の拡充と控除税額の上限の引き上げを行う。
① 対象範囲を拡充し、研究開発型ベンチャー企業の共同研究・委託研究や、要件を満たす民間企業等(大企業を想定)への委託研究を対象範囲に追加する。大企業が有する知見を活用した委託研究が可能になる。
② 控除税額の上限を法人税額×10%(改正前5%)へ引き上げる。
2. 適用時期
2019年4月1日以後開始事業年度から適用される。
3. 実務上の留意点
① 増加インセンティブがさらに高められており、試験研究費が減少する場合には、税額控除率の減少幅が大きくなる。
増減試験研究費割合 | 税額控除率 | 改正による税額控除率の最大増減 |
+0%~+8%の範囲 | 改正により増加 | 増減割合:+5.0%のとき、税額控除率:+0.3% |
▲25%~+0%の範囲 | 改正により減少 | 増減割合:約▲14.2%のとき、税額控除率:▲1.0% |
4. 今後の注目点
① 「研究開発を行う一定のベンチャー企業」の考え方
② 特別試験研究費のうち大学等との共同研究に係るプロジェクトマネジメント業務等を担う者の人件費の明確化
③ 新設の分割承継法人等に係る調整計算等の適正化の具体的内容
5. 改正の内容
(1) 研究開発税制の見直し(大企業の場合)
(2) 研究開発税制の見直し(中小企業者等(適用除外事業者を除く)の場合)
(3) オープンイノベーション型
質の高い研究開発に対する支援を強化する観点から、対象範囲の拡充と控除税額の上限の引き上げを行う。
① 対象となる特別試験研究費の範囲に以下を加える。(対象範囲の拡充)
対象 | 税額控除率 | |
共同研究 | 研究開発型ベンチャー企業(※1) | 25% |
委託研究 (※2) |
研究開発型ベンチャー企業(※1) | 25% |
要件を満たす民間企業等 | 20% | |
特定用途医薬品等に関する試験研究 | 20% |
(※1)「研究開発型ベンチャー企業」とは、産業競争力強化法の新事業開拓事業者でその発行する株式の全部又は一部が同法の認定ベンチャーファンドの組合財産であるものその他これに準ずるものをいう。
(※2)一定の要件を満たす企業間の委託研究である必要があり、委託して行う試験研究が委託法人の基礎研究又は応用研究であること又は委託して行う試験研究が受託者の知的財産権等を利用するものであること、その他の要件を満たす必要がある。
<要件を満たす民間企業等に対する委託研究に関する留意点>
・委託する試験研究が委託法人の工業化研究に該当する場合には、その試験研究が受託者の知的財産等を利用するものである必要がある
・改正前では大企業への委託研究は対象外とされているが、一定の要件を満たせば大企業に対する委託研究も対象範囲となる
② 特別試験研究費の控除税額の上限を法人税額×10%(改正前5%)へ引き上げる。
内容につきましては、「平成31年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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