組織再編税制における適格要件の見直し（株式交換等後の逆さ合併）
1. 改正の概要
(1) 内容
企業が株式交換等によって他の会社を完全子会社にした後、当該企業（親会社）と他の会社（子会社）を合併する場合において、許認可や知名度を考慮して、当該株式交換等後の子会社を存続会社、親会社を消滅会社として合併（逆さ合併）を行う場合がある。
改正により、子会社を存続会社とする逆さ合併を行った場合においても、通常の親会社を存続会社とする合併と同様に、当初の株式交換等の際の適格要件の「関係継続要件」を満たすものとする。
(2) イメージ：株式交換＋逆さ合併
（参考）株式交換＋通常の合併
2. 適用時期
大綱に特段の記載なし
3. 実務上の留意点
企業の買収の際に、例えば許認可を有する事業会社を株式交換等の手法により完全子法人化した後に、当該親法人及び事業会社を合併して１社のみを存続させる場合がある。この場合において、当該株式交換等の適格要件である関係継続要件（完全支配関係継続要件、支配関係継続要件及び親子関係継続要件）を満たす必要がある。
改正前においては、株式交換等完全子法人を被合併法人とする適格合併を行う場合には、当該合併直前の時まで親法人と子法人との間に当該親法人による完全支配関係が継続すれば、関係継続要件を満たす。
しかし、子法人を存続会社とし、親法人を消滅会社とするいわゆる逆さ合併を行う場合には、関係継続要件を満たさず、非適格株式交換等に該当することとなる。
改正案では、当該逆さ合併を行う場合においても、関係継続要件を満たした適格組織再編とし、グループ内再編の活性化につながるものと考える。
4. 今後の注目点
逆さ合併を行った際に、関係継続要件を満たすこととなる、当初の再編の具体的な内容や、適格合併の直前の時までの関係により判定することとなる、完全支配関係継続要件、支配関係継続要件及び親子関係継続要件の具体的な内容
組織再編税制における適格要件の見直し（株式を対価とした組織再編）
1. 改正の概要
(1) 内容
改正前においては、合併等を行った場合において、再編の対価として再編当事者の株式ではなく、「直接の親会社」の株式を対価とするときは、適格要件である「金銭等不交付要件」を満たす。
消滅会社等の株主の立場や戦略的なグループ再編の点から、改正により、合併、分割及び株式交換の対価として合併法人等の直接の親会社以外の完全親会社（間接の親会社）の株式（一定の外国法人株式を除く。）を対価とする場合においても、適格要件である「金銭等不交付要件」を満たすものとする。また、被合併法人等の株主における旧株式の譲渡損益の計上を繰り延べる要件も満たすものとする。
(2) イメージ
2. 適用時期
大綱に特段の記載なし
3. 実務上の留意点
合併に際しては、被合併法人の株主に対価が交付されるが、改正前において適格要件である金銭等不交付要件を満たすためには、合併法人株式（C社株式）又は合併法人の直接100％親法人株式（B社株式）の交付が必要である。
例えば、合併法人である孫会社及び子会社が非上場会社で、親会社が上場会社である場合には、被合併法人の株主の立場からは換金性の高い上場会社株式（A社株式）の取得を希望するケースも想定される。また、合併法人グループとしては、親会社（A社）と子会社（B社）及び孫会社（C社）での完全支配関係を継続したいため、合併法人株式（C社株式）又は直接100％親法人株式（B社株式）の交付を避けたいケースも想定される。
2019年度税制改正により、再編の対価として、間接保有の親会社の株式（A社株式）を交付した場合にも、金銭等不交付要件を満たし、また、株主において旧株式（D社株式）の譲渡損益の計上を繰延べることにより、グループ内再編の活性化につながるものと考える。
4. 今後の注目点
間接保有の完全親会社の範囲（除かれる一定の外国法人の範囲やその他の制限の有無）等
内容につきましては、「平成31年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
