配偶者居住権に関する税務上の取扱い

速報 平成31年度(2019年度)税制改正解説

1. 改正の概要

「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(2018年7月公布)において、配偶者居住権が創設されたことに伴い、相続税等における配偶者居住権の評価方法等の取扱いが定められる。

(1) 配偶者居住権とは

  • 配偶者居住権とは、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物について、終身又は一定の期間、無償で使用し続ける権利のことをいう。
  • 配偶者居住権は、①遺産分割協議、②遺贈(死因贈与を含む)、③家庭裁判所の審判のいずれかの方法により取得することができる。
  • 配偶者居住権を第三者に譲渡することは認められない。
  • 配偶者居住権は配偶者が死亡したときは消滅する。
  • 配偶者短期居住権(相続開始時から少なくとも6か月間は自宅に無償で住み続ける権利)も創設された。

民法02

(2) 配偶者居住権の評価方法

  • 配偶者が取得した配偶者居住権及び敷地利用権は、次のように評価し、相続税の課税対象とする。
  • 相続人等が取得した配偶者居住権が設定がされた建物及びその敷地等は、配偶者居住権という負担付の財産として、次のように通常の評価額から配偶者居住権等相当額を控除して評価し、相続税の課税対象とする。
  • 配偶者短期居住権は、相続税の課税対象としない。

民法02_02

注)上記「相続税評価額」は、それぞれ配偶者居住権が設定されていない場合の相続税評価額とする
※1 残存耐用年数:法定耐用年数(住宅用)×1.5-築年数
※2 存続年数は次のⅰまたはⅱの年数をいう
 ⅰ 配偶者居住権の存続期間が終身の間である場合は配偶者の平均余命年数
ⅱ ⅰ以外の場合は遺産分割協議等により定められた存続期間の年数(配偶者の平均余命年数を上限とする)
※3 「残存耐用年数」または「残存耐用年数-存続年数」がマイナスとなる場合には0とする
※4 民法の法定利率は2020年4月1日より3%となり、その後3年ごとに見直される

(3) その他

① 配偶者居住権の付された不動産は物納劣後財産となる。
② 配偶者居住権の設定登記には、登録免許税が課される(税額:建物の固定資産税評価額の1000分の2)。

2. 適用時期

配偶者居住権に関する民法の規定の施行日である2020年4月1日以降開始の相続から適用されるものと思われる。(大綱に明記されていない。)

3. 実務上の留意点

  • 評価方式の性質上、建物が古いほど、また、配偶者居住権の存続年数が長期である(=配偶者が若い)ほど、自宅不動産全体の評価額に占める配偶者居住権及びその敷地利用権の価額の割合は大きくなる。

4. 今後の注目点

① 敷地利用権は小規模宅地等の特例の対象となると思われる。一方で、敷地所有権は従来通りの要件により適用の可否が判断されるか。
② 民法上、配偶者の死亡により配偶者居住権は消滅するので、相続税の計算上も二次相続においては、配偶者居住権は、課税対象にならないか。(消滅により経済的利益が生じたものとして課税されることはないか)
③ 配偶者居住権が設定された自宅を売却する場合の課税関係
配偶者居住権は譲渡できないため、自宅を売却するときは、配偶者居住権を放棄することになると思われる。その場合、配偶者居住権及び敷地利用権相当額の経済的利益の供与があったものとして居住建物及び敷地の所有者に対して贈与税が課されるか。
課されるのであれば、配偶者居住権の設定にあたり将来の自宅売却の可能性も考慮したほうがよい。

民法02_03

 

 

 

内容につきましては、「平成31年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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