教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し

速報 平成31年度(2019年度)税制改正解説

教育資金の一括贈与非課税措置の見直し

1. 改正の概要

(1) 改正の背景・概要

教育資金の一括贈与非課税措置は、高齢者世代の保有資産を早期に若年世代へ移転し、経済活性化させることを目的に2013年度に導入されたが、導入当初と比べて新規契約数が大幅に減少している。また、格差の固定化や機会の平等の確保に留意した見直しが必要との指摘があることから、所要の見直しを行った上で2年間延長することとされた。なお、次の適用期限到来時に、当該非課税措置の必要性について改めて見直しがされる。

 

(2) 受贈者の所得制限

教育資金の信託等をする年の前年の合計所得金額が1,000万円を超える受贈者は、非課税措置の適用を受けることができないこととされる。

 

(3) 教育資金の範囲見直し

下表のとおり、非課税措置の対象となる教育資金から、23歳以上の受贈者に係る趣味の習い事等の費用を除外する。

教育資金の使途 支払時点における受贈者の年齢
23歳未満 23歳以上
学校等に支払われる金銭 適用可 適用可
学校等以外の者に支払われる金銭 以下に該当するもの
①教育に関する役務提供の対価
②スポーツ・文化芸術に関する活動等に係る指導の対価
③上記①②に係る物品の購入費及び施設の利用料
教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練の受講費 適用可 適用可
上記以外のもの 適用可 適用不可
上記以外のもの(通学定期券代、留学渡航費など) 適用可 適用可

(4) 死亡前3年以内に非課税措置の適用を受けた場合の取り扱い

教育資金管理契約終了の日までの間に贈与者が死亡した場合において、受贈者が、贈与者からその死亡前3年以内に取得した信託受益権等について非課税措置の適用を受けたことがあるときは、その死亡の日における管理残額を受贈者が贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなして、相続税の課税対象となる。
ただし、その死亡の日において次のいずれかに該当する場合を除く。

① 受贈者が23歳未満である場合
② 受贈者が学校等に在学している場合
③ 受贈者が教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
※管理残額・・・非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額のうち、贈与者から死亡前3年以内に取得した信託受益権等の価額に対応する金額をいう。

 

(5) 教育資金管理契約の終了事由の見直し

受贈者が30歳に達した場合においても、上記(4)②又は③のいずれかに該当する場合には、次のいずれか早い日に教育資金管理契約が終了するものとする。
① その年において上記(4)②又は③のいずれかに該当する期間がなかった場合におけるその年の12月31日
② 受贈者が40歳に達する日

2. 適用時期

(1) 受贈者の所得制限

2019年4月1日以後に信託等により取得する信託受益権等に係る贈与税について適用する。

(2) 教育資金の範囲見直し

2019年7月1日以後に支払われる教育資金について適用する。

(3) 死亡前3年以内に非課税措置の適用を受けた場合の取り扱い

2019年4月1日以後に贈与者が死亡した場合について適用する。
ただし、同日前に取得した信託受益権等の価額については、管理残額の計算に含まない。

(4) 教育資金管理契約の終了事由の見直し

2019年7月1日以後に受贈者が30歳に達する場合について適用する。

3. 実務上の留意点

教育資金の一括贈与非課税措置の適用を受けた場合、改正前は、贈与者の死亡前3年以内の贈与であっても相続税の課税対象とはならなかった。改正案は、その死亡の日において、受贈者が①23歳以上で、②在学中でなく、③一定の教育訓練中でない場合には、2019年3月31日までに教育資金の一括贈与非課税措置の適用を受けた部分を除き、管理残額(非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額のうち、贈与者から死亡前3年以内に取得した信託受益権等の価額に対応する金額)が相続税の課税対象となるため、留意が必要。

4. 今後の注目点

死亡前3年以内に取得した信託受益権等と3年より前に取得した信託受益権等があり、かつ、教育資金支出額がある場合における管理残額の計算方法。

 


結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し

1. 改正の概要

教育資金の一括贈与非課税措置と同様に、結婚・子育て資金の信託等をする年の前年の合計所得金額が1,000万円を超える受贈者は、非課税措置の適用を受けることができないとした上で、2年間延長することとされた。

2. 適用時期

2019年4月1日以後に信託等により取得する信託受益権等に係る贈与税について適用する。

 

 

内容につきましては、「平成31年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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