居住用賃貸建物の取得に係る消費税の仕入税額控除制度の見直し

速報 令和2年度(2020年度)税制改正解説

1. 改正の概要

(1) 仕入税額控除の制限

住宅として貸付けを行う建物を取得した場合は、住宅の家賃(非課税売上)に対応する仕入れに該当するため、その建物の取得に係る消費税については、本来仕入税額控除の適用を受けることができない。しかし、金地金などの売買(課税売上)を繰り返し行うことにより課税売上を意図的に増加させ、課税売上割合を引き上げると、その建物に係る消費税の全部又は一部について仕入税額控除の適用を受けることができてしまう。
そのため、居住用賃貸建物(注1)の課税仕入れについて、仕入税額控除の適用を認めないこととされる。
なお、居住用賃貸建物のうち、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分については当該控除の対象とすることができる。

 

(注1) 居住用賃貸建物とは、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産(注2)に該当するものをいう。
(注2) 高額特定資産とは、一の取引の単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額(税抜き)が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいう。

 

図1-Sep-11-2023-06-20-52-2082-AM

 

(2) 仕入税額控除の加算調整

(1)により仕入税額控除の適用が認められなかった居住用賃貸建物について、一定期間(注3)内に住宅の貸付け以外の貸付けや譲渡をした場合には、貸付けや譲渡の対価の額を基礎として計算した額を3年を経過する日の属する課税期間又は譲渡をした日の属する課税期間の仕入控除税額に加算する。

 

(注3) 一定期間とは、その仕入れの日から同日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の末日までをいう。

 

<改正後のイメージ>

図2-Sep-11-2023-06-22-29-4987-AM

 

2. 適用時期

2020年(令和2年)10月1日以後に仕入れを行った居住用賃貸建物に適用される。
ただし、2020年(令和2年)3月31日までに締結した契約に基づき仕入れを行った居住用賃貸建物には適用しない。

3. 実務上の留意点

居住用賃貸建物の課税仕入れ後、一定期間内に住宅以外の貸付けや譲渡をした場合には調整計算が必要となる。


4. 今後の注目点

居住用賃貸建物の課税仕入れを行った場合において、高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度の適用及び簡易課税制度の選択の制限を受けるかどうか確認が必要である。


 

内容につきましては、「令和2年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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