国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例

速報 令和2年度(2020年度)税制改正解説

1. 改正の概要

(1)国外中古建物(※)を賃貸し、不動産所得を有する場合に、不動産所得の金額の計算上、損失の金額が生じたときは、その国外中古建物の減価償却費に相当する金額は、生じなかったものとみなす。
(※) 不動産所得の金額の計算上、建物の減価償却費として、必要経費に算入する金額を、「簡便法」または「一定の書類の添付がない見積法」により算定された耐用年数により計算しているもの。

(2)国外中古建物を譲渡した場合の、譲渡所得の金額の計算上、その取得費から、上記(1)により「なかったもの」とみなされた減価償却費は控除しない。つまり、「なかったもの」とみなされた減価償却費分だけ、譲渡所得およびそれに係る税負担は小さくなる。

2. 適用時期

2021年(令和3年)以後の各年において、国外中古建物から生ずる国外不動産所得の損失について適用する。

3. 実務上の留意点

① 国外中古建物につき、簡便法により算定した短い耐用年数による多額の減価償却費計上から生じる損失はなかったものとみなされ、その損失と、給与所得や事業所得を通算することによる税額軽減ができなくなる。
② 見積法により耐用年数を算定した場合でも、その使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類の添付がない場合は、本改正の適用対象となる。

4. 今後の注目点

① 本改正の取扱いは「保有目的」とは関係なく適用される見込みである(例えば、海外勤務経験のあるサラリーマンが、当時の住まいを、日本帰国後に賃貸しているような場合)。
② 当該適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合の、「その他の所要の措置」の内容。
③「その使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類」とはどのような書類か。

 

【国外中古建物の不動産所得の計算】

図5-Sep-05-2023-07-51-13-1694-AM

(※)簡便法による耐用年数
① 法定耐用年数の全部を経過した資産
・・・その法定耐用年数の20%に相当する年数
② 法定耐用年数の一部を経過した資産
・・・その法定耐用年数から経過した年数を差引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数

(例) 木造 築25年の居住用建物の場合
法定耐用年数 22年 < 25年 ∴ 簡便法による耐用年数 22年×20%=4.4年→ 4年(1年未満の端数切捨)で減価償却可能

 

 

内容につきましては、「令和2年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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