未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(夫)控除の見直し
速報 令和2年度(2020年度)税制改正解説
1. 改正の概要
全てのひとり親家庭の子どもに対して公平な税制を実現する観点から、「婚姻歴の有無による不公平」と「男性のひとり親と女性のひとり親の間の不公平」を同時に解消するために、次の措置を講じる。
① 未婚のひとり親が生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る)を有し、かつ未婚のひとり親の合計所得金額が500万円以下である場合には、寡婦(夫)控除を適用する(住民票で事実婚であることが明記されている場合を除く)。
② 寡婦(夫)控除の適用について、寡婦(女性)に寡夫(男性)と同じ所得制限(合計所得金額500万円以下)を設ける。
③ 寡婦(夫)の要件について、住民票で事実婚であることが明記されている場合を除く。
④ 子ありの寡夫(男性)の控除額(改正前所得税27万円、住民税26万円)について、子ありの寡婦(女性)と同額(所得税35万円、住民税30万円)とする。
■ 寡婦控除(女性)
改正前
(単位:万円)
配偶関係 | 死別 | 離別 | ||||
本人所得 (合計所得金額) |
500万円以下 | 500万円超 | 500万円以下 | 500万円超 | ||
扶養親族 | 有 | 子 |
35 |
27 (26) |
35 (30) |
27 (26) |
子以外 | 27 (26) |
27 (26) |
27 (26) |
27 (26) |
||
無 | 27 (26) |
– | – | – |
(注)上段が所得税、下段が住民税。子は、総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る。
改正後
(単位:万円)
配偶関係 | ③ 死別 (※) |
③ 離別 (※) |
① 未婚 (※) |
|||||
本人所得 (合計所得金額) |
500万円以下 | 500万円超 | 500万円以下 | 500万円超 | 500万円以下 | 500万円超 | ||
扶養親族 | 有 | 子 |
35 |
② | 35 (30) |
② | 35 (30) |
- |
子以外 | 27 (26) |
② | 27 (26) |
② | - | - | ||
無 | 27 (26) |
– | – | – | – | – |
(※)住民票で事実婚であることが明記されている場合を除く。
(注)上段が所得税、下段が住民税。子は、総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る。
■ 寡夫控除(男性)
改正前
(単位:万円)
配偶関係 | 死別 | 離別 | ||||
本人所得 (合計所得金額) |
500万円以下 | 500万円超 | 500万円以下 | 500万円超 | ||
扶養親族 | 有 | 子 | 27 (26) |
– | 27 (26) |
– |
子以外 | – | – | – | – | ||
無 | – | – | – | – |
(注)上段が所得税、下段が住民税。子は、総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る。
改正後
(単位:万円)
配偶関係 | ③ 死別 (※) |
③ 離別 (※) |
① 未婚 (※) |
|||||
本人所得 (合計所得金額) |
500万円以下 | 500万円超 | 500万円以下 | 500万円超 | 500万円以下 | 500万円超 | ||
扶養親族 | 有 | 子 | ④ 35 (30) |
– | ④ 35 (30) |
– | 35 (30) |
– |
子以外 | – | – | – | – | – | – | ||
無 | – | – | – | – | – | – |
(※)住民票で事実婚であることが明記されている場合を除く。
(注)上段が所得税、下段が住民税。子は、総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る。
2. 適用時期
2020年(令和2年)分以後の個人所得税について適用する。
2021年度(令和3年度)分以後の個人住民税について適用する。
3. 実務上の留意点
(1) 住民票で事実婚であることが明記されている場合とは、住民票の続柄に「夫(未届)」又は「妻(未届)」の記載があることを指し、その場合には寡婦(夫)控除の適用は受けられない。
(2) 扶養親族のいない死別の寡婦(女性)(合計所得金額500万円以下)、子以外の扶養親族を有する死別・離別の寡婦(女性)(合計所得金額500万円以下)については、控除額(所得税27万円、住民税26万円)は改正前のままであり、扶養親族のいない死別の寡夫(男性)(合計所得金額500万円以下)、子以外の扶養親族を有する死別・離別の寡夫(男性)(合計所得金額500万円以下)には適用範囲を拡大していない。
(3) 未婚のひとり親の寡婦(夫)控除については、給与等及び公的年金等の源泉徴収の際に適用ができることとする。なお、給与所得者については2020年(令和2年)分の年末調整において適用できることとする。
4. 今後の注目点
個人所得税及び個人住民税において講じられる所要の措置及び経過措置の内容。
内容につきましては、「令和2年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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