中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設(中小M&A税制)
速報 令和3年度(2021年度)税制改正解説
1. 改正の概要
(1) 中小企業事業再編投資損失準備金の繰入れ
経営力向上計画(経営資源集約化措置(仮称)が記載されたものに限る。)の認定を受けた中小企業者(青色申告法人)が、他の法人の株式等の取得(購入による取得に限り、その株式等の取得価額が10億円以下のものに限る)をし、かつ、これをその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している場合において、株式価値低落による損失(簿外債務、偶発債務等のリスク)に備えるため、株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積立てたときは、当該金額の損金算入を認める。
(2) 中小企業事業再編投資損失準備金の取崩し
上記(1)により積み立てた準備金の金額は、その株式の全部又は一部を有しなくなった場合やその株式等の帳簿価額を減額した場合等に取り崩すほか、5年間の据置期間経過後、原則として5年間で均等額を取り崩して益金算入する。
2. 適用時期
改正中小企業等経営強化法(以下、「改正強化法」)の施行の日(未定)から2024年(令和6年)3月31日までに経営力向上計画の認定を受けた株式等の取得に対して適用する。。
3. 実務上の留意点
- 株式の取得前に、改正強化法の経営力向上計画を作成・申請し、認定を受ける必要がある。
- M&A実行のタイトなスケジュールの中で煩雑な事務手続きが必要になる可能性がある(経営資源集約化措置(仮称)の内容を確認する必要がある)。
- 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度)の2年延長に加えて、対象設備の範囲に、本計画の実施に必要なM&A後の設備投資が含められる(「法人課税中小企業向け設備投資促進税制の見直し及び延長」参照)。M&Aに伴い、複合的な税制の活用が可能になるため、各制度の適用要件を把握する必要がある。
4. 今後の注目点
- 売り手の要件(買い手と同じく中小企業者か。また、例えば、買い手の同族会社、外国法人、資産管理会社や不動産保有会社が除外されるか)
- 買い手の要件(例えば、資産管理会社や不動産保有会社が除外されるか)
- 購入の定義(一般的なM&A手法として合併、分割、株式交換等の組織再編によるものや、事業譲渡、第三者割当増資の引受け等が考えられるが、購入に含まれないという理解で良いか)
- 株式等の範囲(例えば、医療法人の持分などは対象になるか)
- 取得される株数の要件(50%超の取得など)
- 準備金の積立時期(例えば、株式取得事業年度に限られるのか)
内容につきましては、「令和3年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
税制改正の最新情報など、山田&パートナーズの税務情報のニュースレター登録は以下から