給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の税額控除制度

速報 令和3年度(2021年度)税制改正解説

1. 改正の概要

(1) 趣旨

コロナ禍における労働者を取り巻く環境が大きく変化する中で、新たな人材の獲得及び人材育成の強化を促しつつ、第二の就職氷河期を生み出さないようにする観点から、新規雇用者の給与等支給額及び教育訓練費の増加に着目した税制へと見直しを行う。

(2) 内容

国内の新規雇用者に対する給与等の増加割合が2%以上であるときは、新規雇用者給与等支給額(雇用者への給与等の支給増加額を上限)の15%(20%)を税額控除できる措置とする。

項目 改正前 改正後
適用要件 賃上げに関する要件 適用年度の雇用者給与等支給額>前期の雇用者給与等支給額 適用年度の雇用者給与等支給額(※1)>前期の雇用者給与等支給額
適用年度の継続雇用者給与等支給額≧前期の継続雇用者給与等支給額×103% 適用年度の新規雇用者給与等支給額(※2)(※3)≧前期の新規雇用者給与等支給額×102%
設備投資に関する要件 適用年度の国内設備投資額≧適用年度の減価償却費総額×95% 削除
税額控除

・(雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)×15%(注1)
(注1)適用年度の教育訓練費の額≧比較教育訓練費の額×120%の場合・・・20%

・控除税額は適用年度の法人税額の20%を上限

控除対象新規雇用者給与等支給額(※4)×15%(注1)

(注1)適用年度の教育訓練費の額≧前期の教育訓練費の額×120%の場合・・・20%

・控除税額は適用年度の法人税額の20%を上限

(※1)「雇用者給与等支給額」とは、国内雇用者(法人の使用人(一定の者を除く)のうち国内の事業所に勤務する雇用者)に対する給与等の支給額をいう。
(※2)「新規雇用者給与等支給額」とは、国内の事業所において新たに雇用した雇用保険法の一般被保険者(支配関係がある法人から異動した者及び海外から異動した者を除く)に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額をいう。
(※3) 新規雇用者給与等支給額からは雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除しないこととする。
(※4)「控除対象新規雇用者給与等支給額」とは、国内の事業所において新たに雇用した者(支配関係がある法人から異動した者及び海外から異動した者を除く)に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額(雇用者給与等支給額から前期の雇用者給与等支給額を控除した金額を上限)をいう。

2. 適用時期

令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度について適用される。

3. 実務上の留意点

  • 判定に用いる「新規雇用者給与等支給額」は新たに雇用した雇用保険法の一般被保険者に対する給与等であるのに対し、「控除対象新規雇用者給与等支給額」は新たに雇用した者に対する給与等であるため、その対象者の範囲が異なる。
  • 設立事業年度は本制度の適用対象外となる。
  • 法人事業税(外形標準課税)の計算において、改正後の適用要件を満たすときは、控除対象新規雇用者給与等支給額を付加価値割の課税標準から控除することとなる。
  • 中小企業者等については法人住民税の計算においても税額控除の適用がある。

4. 今後の注目点

  • 給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」について、明確化される範囲の内容
  • 地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度の適用がある場合には、所要の調整を行うこととされているが、調整内容の詳細

 

 

内容につきましては、「令和3年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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