中小企業における所得拡大促進税制

速報 令和3年度(2021年度)税制改正解説

1. 改正の概要

中小企業における所得拡大促進税制について、給与等の支給額の増加割合の判定が継続雇用者(前期及び当期に渡り給与等の支給を受ける一定の者)への給与等の支給額から、国内の雇用者への給与等の支給額へと見直しを行った上、その適用期限を2年間延長する。

項目 改正前 改正後
適用要件 賃上げに関する要件 適用年度の雇用者給与等支給額>前期の雇用者給与等支給額 適用年度の雇用者給与等支給額≧前期の雇用者給与等支給額×101.5%(※1)
適用年度の継続雇用者給与等支給額≧前期の継続雇用者給与等支給額×101.5%
税額控除

・(雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)×15%(注1)
(注1)下記の①及び②の要件を満たす場合・・・25%

① 適用年度の継続雇用者給与等支給額≧前期の継続雇用者給与等支給額×102.5%
② 下記のいずれかを満たす場合
イ:適用年度の教育訓練費の額≧前期の教育訓練費の額×110%
ロ:適用年度終了の日までに、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って、経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこと

・控除税額は適用年度の法人税額の20%を上限

・(雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)(※1)(※2)×15%(注1)
(注1)下記の①及び②の要件を満たす場合・・・25%

① 適用年度の雇用者給与等支給額≧前期の雇用者給与等支給額×102.5%(※1)
② 下記のいずれかを満たす場合

イ・ロ(同左)

 

・控除税額は適用年度の法人税額の20%を上限

(※1)雇用者給与等支給額からは雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除しないこととする。
(※2) 雇用者給与等支給額から前期の雇用者給与等支給額を控除した金額(税額控除率を乗ずる基礎金額)は、雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除して計算した金額を上限とする。

2. 適用時期

令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度について適用される。

3. 実務上の留意点

  • 適用要件は給与等の支給額の増加割合の判定のみとなり、その判定に用いる給与等の支給額は継続雇用者への給与等の支給額から雇用者への給与等の支給額へと変更されるため、適用要件の充足の判定が容易となる。
  • 雇用調整助成金については、雇用者給与等支給額から控除しないこととされるが、税額控除率を乗ずる基礎金額は、雇用調整助成金を控除して計算した金額が上限となるため、以下の比較計算が必要となる。
  前期 当期 増加額
雇用者給与等支給額(a) 10,000 12,000 2,000
雇用調整助成金(b) -200 -1,000 上限
(a)-(b) 9,800 11,000 1,200
税額控除率を乗ずる基礎金額 ①>② ∴1,200
  • 法人住民税の計算においても税額控除の適用がある。
  • 本制度(中小企業における所得拡大促進税制)の適用要件を満たさない場合においても、新規雇用者に対する給与等が増加しているときは、「給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の税額控除制度」の適用の可能性がある。

4. 今後の注目点

給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」について、明確化される範囲の内容

 

 

内容につきましては、「令和3年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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