カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設
速報 令和3年度(2021年度)税制改正解説
1. 改正の概要
(1) 趣旨・目的
2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」という高い目標に向けて、産業競争力強化法において規定される予定の「中長期環境適応計画(仮称)」に基づき導入される、生産プロセスの脱炭素化に寄与する設備や、脱炭素化を加速する製品を生産する設備に対して、税制上支援する措置が創設される。
(2) 内容
産業競争力強化法の改正法の「中長期環境適応計画(仮称)」について認定を受けた青色申告書を提出する法人が、「中長期環境適応計画(仮称)」に従って導入される一定の設備等の取得等をし、国内にある事業の用に供した場合、特別償却又は税額控除との選択適用ができる。
適用要件 |
① 青色申告書を提出する法人 ② 産業競争力強化法の改正法の「中長期環境適応計画(仮称)」について認定を受けること ③「中長期環境適応計画(仮称)」に記載された「中長期環境適応生産性向上設備(仮称)」又は「中長期環境適応需要開拓製品生産設備(仮称)」の取得等をし、国内にある事業の用に供すること |
取得価額 | 対象資産 | 税制措置(選択適用) | |
特別償却 | 税額控除 | ||
対象資産の取得価額の合計額のうち500億円を限度 |
① 中長期環境適応生産性向上設備 ② 中長期環境適応需要開拓製品生産設備 |
取得価額×50% |
① 通常 ② 温室効果ガス削減に著しく資するもの (注)デジタルトランスフォーメーション投資促進税制の控除税額との合計で当期の法人税額の20%を上限 |
2. 適用時期
産業競争力強化法の改正法の施行の日から2024年(令和6年)3月31日までの間に「中長期環境適応生産性向上設備」又は「中長期環境適応需要開拓製品生産設備」の取得等をして、国内にある事業の用に供した資産に適用される。
3. 実務上の留意点
- 大企業に対する措置法税額控除適用要件の見直し及び3年延長
下記の①~③のいずれにも該当しない大企業については、研究開発税制・地域未来投資促進税制・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制・デジタルトランスフォーメーション投資促進税制の税額控除を適用しない。
① 当期所得≦ 前期所得
② 継続雇用者給与等支給額(※1)>継続雇用者比較給与等支給額(※1)
(※1)要件を判定する場合に雇用調整助成金及びこれに類するものを控除しない。
③当期設備投資額 > 減価償却費の30%(2020年(令和2年)3月31日以前に開始した事業年度については10%) - 地方税において、「特別償却」を選択した場合には、全ての法人に係る法人住民税及び法人事業税について適用される一方で、「税額控除」を選択した場合には、中小企業者等(※2)に係る法人住民税にのみ適用される。
(※2)中小企業者等とは、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(発行済株式又は出資の1/2以上を同一の大規模法人に所有されている法人及び発行済株式又は出資の2/3以上を大規模法人に所有されている法人を除く)及び資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人をいう。 - 所得税についても同様の改正が行われる。
4. 今後の注目点
- リチウムイオン電池、省エネ半導体の製造設備などが想定される。
- 産業競争力強化法の改正法の施行日及び制定内容について
- 税額控除10%の対象となる温室効果ガスの削減に著しく資するものの具体的な要件及び内容
- 新たな需要の開拓に寄与することが見込まれる製品として主務大臣が定める製品の具体的な要件及び内容
内容につきましては、「令和3年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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