繰越欠損金の控除上限の特例の創設

速報 令和3年度(2021年度)税制改正解説

1. 改正の概要

(1) 概要

青色申告書を提出する法人が、一定の期間内に産業競争力強化法の改正法の「事業適応計画」(仮称)の認定を受けた場合には、特例対象欠損金額(注1)を、翌期以後、最大で5年間、欠損金の繰越控除前の所得の金額の範囲内で損金算入することができる特例制度が創設される。
(注1)2年間(2020年(令和2)年4月1日から2021年(令和3年)4月1日までの期間内の日を含む事業年度(一定の場合には、2020年(令和2年)2月1日から同年3月31日までの間に終了する事業年度及びその翌事業年度)において生じた青色欠損金額

(2) 特例の内容

上記(1)の特例対象欠損金額については、適用事業年度(注2)に限り、DX(デジタルトランスフォーメーション)やカーボンニュートラル等、事業再構築・再編に係る投資に応じた範囲において、欠損金の繰越控除前の所得の金額の範囲内で最大100%の控除が可能となる。
(注2)下記のいずれにも該当する事業年度
① 特例対象欠損金額が生じた事業年度のうちその開始の日が最も早い事業年度後の事業年度で、所得の金額が生じた最初の事業年度(基準事業年度)開始の日以後5年以内に開始した事業年度
② 事業適応計画の実施時期を含む事業年度
③ 2026年(令和8年)4月1日以前に開始する事業年度

特例の対象となる欠損金の発生事業年度 繰越控除対象事業年度 欠損金の控除限度額
2年間 最大5年間 最大100%まで控除可能

(3) 特例の適用イメージ

図21(注3)事業適応計画に従って行った投資の額から、既に本特例により欠損金の繰越控除前の所得の50%を超えて損金算入した欠損金額を控除した金額

2. 実務上の留意点

  • 控除の上限が引き上げられることで、税効果会計に伴う繰延税金資産が増加するなど財務諸表の改善効果が期待できる。
  • キャッシュフローの改善が見込まれる。

3. 今後の注目点

  • 産業競争力強化法の改正法の施行日及び制定内容について
  • 事業適応計画の概要、具体的な認定要件、申請方法等
  • 事業適応に該当するかどうかの一定の基準の内容
  • 特例対象欠損金額を認識する事業年度が2020年(令和2年)2月1日から同年3月31日までの間に終了する事業年度及びその翌事業年度となる、一定の場合の内容

 

 

内容につきましては、「令和3年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

「速報 令和3年度(2021年度)税制改正解説」へ戻る
「税制改正解説」へ戻る
「インサイト」へ戻る


税制改正の最新情報など、山田&パートナーズの税務情報のニュースレター登録は以下から