貸付け用の少額資産を取得した場合における取得価額の損金算入制度の見直し
速報 令和4年度(2022年度)税制改正解説
1. 改正の概要
(1) 内容
減価償却資産を取得した場合、通常は耐用年数に基づいた償却計算により損金算入が行われるが、少額資産については短期に損金算入を認める下表の3制度が設けられている。今年度改正により、この3制度について、主要な事業として行われる場合を除き、貸付けの用に供したものが対象資産から除外される。また、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、適用期限が2年延長される。
制度 | 取得価額要件 | 取り扱い(※3) |
少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度 | 10万円未満 (又は使用可能期間が1年未満) |
取得価額の全額を損金算入 |
一括償却資産の損金算入制度 | 20万円未満 | 3年間の各事業年度において均等償却 |
中小企業者等(※1)の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例 | 30万円未満 | 取得価額の全額を損金算入 (1事業年度当たり300万円まで) |
※1 中小企業者等とは、中小企業者(次の①もしくは②)又は農業協同組合等をいう。ただし、常時使用する従業員が500人超の法人、連結法人、適用除外事業者(※2)を除く。
① 資本金又は出資金が1 億円以下の法人(同一の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の2 分の1 以上を所有されている法人及び2 以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3 分の2 以上を所有されている法人を除く。)
② 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000 人以下の法人
※2 適用除外事業者とは、その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人をいう。
※3 それぞれ損金算入するためには損金経理をする必要がある。
(2) まとめ(減価償却資産の損金算入制度の適用関係)※ 下線箇所が改正内容
取得価額 | ||||
10万円未満 | 10万円以上 20万円未満 |
20万円以上 30万円未満 |
30万円以上 | |
少額の減価償却資産の 取得価額の損金算入制度 |
○ (貸付け用を除く) |
× | × | × |
一括償却資産の損金算入制度 | ○ (貸付け用を除く) |
○ (貸付け用を除く) |
× | × |
中小企業者等の少額減価償却資産の 取得価額の損金算入の特例 |
○ (貸付け用を除く) |
○ (貸付け用を除く) |
○ (貸付け用を除く) |
× |
通常の減価償却 | ○ | ○ | ○ | ○ |
2.適用時期
大綱からは不明である
3. 実務上の留意点
- 資産の貸付けが主要な事業として行われる場合には、本改正の対象外となる。したがって、物品賃貸業者(リース業・レンタル業)が賃貸する少額資産や、不動産賃貸業者が物件に付随して賃貸する少額資産については改正の影響がないと考えられる。
- 所得税についても同様の改正が行われる
4. 今後の注目点
「主要な事業として行われるもの」の定義
内容につきましては、「令和4年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
「速報 令和4年度(2022年度)税制改正解説」へ戻る
「税制改正解説」へ戻る
「インサイト」へ戻る
税制改正の最新情報など、山田&パートナーズの税務情報のニュースレター登録は以下から