財産債務調書制度等の見直し

速報 令和4年度(2022年度)税制改正解説

1. 改正の概要

(1) 趣旨・目的

財産債務調書制度について、所得2,000万円以下の者は、仮に高額の資産を保有していたとしても、調書の提出義務がなく、課税側において、納税者における資産の異動状況等について、十分な把握ができているとは言い難い状況になっている。また、改正前の提出期限(3月15日)までに、提出義務者が保有財産の種類・数量・価額を正確に算出・記載することは必ずしも容易ではない。これらを踏まえ、一定の見直しを行う。

(2) 内容

改正内容 改正前 改正後
① 財産債務調書の提出義務者の見直し

A要件
以下のいずれにもに該当する者
・所得基準:所得2,000万円超
・財産基準:財産の価額の合計額が3億円以上
または
国外転出特例対象財産の価額の合計額が1億円以上

以下のA要件またはB要件(新設)に該当する者
A 要件 同左
B 要件(新設)
・財産基準:財産の価額の合計額が10億円以上(所得基準なし)

② 財産債務調書等の提出期限の見直し 翌年の3月15日 翌年の6月30日
③ 提出期限後に財産債務調書等が提出された場合の宥恕規定の見直し 提出期限後に財産債務調書を提出した場合であっても、調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その財産債務調書は提出期限内に提出されたものとみなして、過少申告加算税等の特例を適用する 提出期限後の財産債務調書の提出が、調査通知前にされたものである場合に限り、過少申告加算税等の特例を適用する
④ 財産債務調書等の記載事項の見直し 取得価額100万円未満の家庭用財産(現金、書画骨董、貴金属類を除く)は、財産債務調書への記載を要しない ・取得価額300万円未満の家庭用財産(現金、書画骨董、貴金属類を除く)は、財産債務調書への記載を要しない
・その他、記載事項について運用上の見直しを行う

(注1)改正内容①の財産基準は、その年の12月31日において有する財産の価額で判定する。
(注2)国外財産調書においても、改正内容②及び③並びに④(記載事項の運用上の見直し)について、同様の改正とする。
(注3)改正内容③における過少申告加算税等の特例とは、以下の措置をいう。
 (イ):財産債務調書を提出期限内に提出した場合には、財産債務調書に記載がある財産債務に関して生ずる所得で一定のものに対する所得税等又は相続税の申告漏れが生じたときであっても、その財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%軽減される。
 (ロ):財産債務調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産債務の記載がない場合に、その財産債務に関する所得税等の申告漏れ生じたときは、その財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%加重される。

2. 適用時期

改正内容①:2023年(令和5年)分以後の財産債務調書について適用する。
改正内容②:2023年(令和5年)分以後の財産債務調書又は国外財産調書について適用する。
改正内容③:財産債務調書又は国外財産調書が2024年(令和6年)1月1日以後に提出される場合について適用する。
改正内容④:2023年(令和5年)分以後の財産債務調書又は国外財産調書(記載事項の運用の見直し)について適用する。

3. 実務上の留意点

  • 所得がない、あるいは所得が2,000万円以下であっても、保有する財産の価額によっては、財産債務調書の提出義務者に該当することになるため、財産の把握(10億円以上か否か)が必要となる。
  • 上場株式等の取引につき、特定口座内で生じる所得に対して源泉徴収することを選択し、確定申告不要としている場合においても、保有する財産の価額によっては、財産債務調書の提出義務者に該当することになるため、上記と同様に留意が必要となる。

4. 今後の注目点

  • 改正内容④の、「記載事項についての運用上の見直し」の内容について。
  • 大綱上の「(5)その他所要の措置を講ずる.」の内容について。

 

 

内容につきましては、「令和4年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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