カーボンプライシング(炭素税など)の導入見送り
速報 令和4年度(2022年度)税制改正解説
1. 概要
カーボンプライシング(炭素税など)について、大綱での明記は見送られた。
カーボンニュートラルに向けた税制は、今後の検討事項となる。
<気候変動問題などの地球規模の社会課題の解決を巡る動向>
2015年 | 国連 | SDGs(持続可能な開発目標) 2030年に向けて、世界的な優先課題・世界のあるべき姿を示す。 |
2015年 | 国連 | パリ協定 世界的な平均気温上昇を、産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つと共に、1.5℃に抑える努力を追求する。 |
2017年 | TCFD (気候変動関連財務情報開示タスクフォース) |
TCFD提言 企業が気候変動のリスク・機会を認識し経営戦略に織り込み、年次の財務報告において財務に影響のある気候関連情報の開示を推奨 |
2020年 | 日本政府 | 2050年カーボンニュートラル宣言 2050年に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成する。 |
2021年 | 日本政府 | 2030年度の温室効果ガス削減目標 2013年度から46%削減、更に50%の高みに向けて挑戦を続ける。 |
2021年 | IPCC (国連気候変動に関する政府間パネル) |
第6次評価報告書 人間の影響が気候システムを温暖化させてきたのは、疑う余地がない。 |
2021年 | 与党 | 2022年度税制改正大綱における基本的考え方 ・温室効果ガス削減目標を実現するため、技術革新・社会実装を進め、脱炭素を選好する社会の構築が不可欠。 ・グリーン社会の実現に係る利益の享受と必要な負担を国民全体で分かち合う視点が重要。・経済と環境の好循環の実現を目指す。 |
カーボンプライシングとは、CO2(二酸化炭素:カーボン)に価格付け(プライシング)し、排出者の行動を変容させる温暖化対策の仕組み
<代表的なカーボンプライシング>
政府によるプライシング | 民間によるプライシング | |
国内 | 炭素税:(燃料・電気の利用など)CO2の排出量に比例した課税を行うことで、炭素に価格を付ける仕組み。 | インターナル・カーボンプライシング:企業が独自に自社のCO2排出に対し価格を付け、投資判断などに活用する仕組み。 |
排出量取引:企業ごとに排出量の上限を決め、排出量が上限を超過する企業と下回る企業との間で、排出枠を売買する仕組み。 | クレジット取引:CO2削減に価値を付けて、市場を通じて企業間でやり取りをする仕組み。 | |
国際 | 国境炭素税(炭素国境調整措置):温暖化対策が足らない国で作られた輸入品に価格を上乗せする仕組み。 | 海外ボランタリークレジット取引:国際的な取引市場で、民間セクターにより運営されるクレジット取引 |
仕組み | 価格 | 総排出量 | |
炭素税 | 税率設定により「価格」によるCO2調整 | 価格は、政府が決定 | 総排出量の削減は、事業者に依存 |
排出量取引 | 排出「量」の上限設定によるCO2調整 | 価格は、市場が決定 | 総排出量は、政府の上限設定次第 |
出典:世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会(中間整理)(一部修正)
脱炭素に向け、分野ごとの技術の確立状況(コストや規模を含めた社会実装の可能性)やマクロ経済状況を踏まえた適切な時間軸を設定したポリシーミックス(政策の組み合わせ)の検討を進める。
その際、産業競争力の強化やイノベーションの促進につながるかを見極め、国益の観点から主体的かつ戦略的に検討する。
<カーボンプライシングのポリシーミックス(政策の組み合わせ)>
現時点 | 短期的な政策 | 中長期における政策 |
代替手段が確立されている (脱炭素技術など) ※ただし、高コスト |
導入を支援する手法 (例) |
コスト面でも既存技術と競争力を持つ分野について、より強力に導入へのインセンティブを働かせる (例) |
代替手段が確立されていない (脱炭素技術が未存在など) |
早期の技術確立の支援・主体の着実な低炭素化への移行 (例) |
脱炭素技術の目途が立ったが高コストな場合、他の技術と比較・競争を行いつつ、導入を支援する手法 (例) |
2. 適用時期:未定(今後の検討事項)
内容につきましては、「令和4年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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