地域未来投資促進税制の見直し・延長

速報 2025年度(令和7年度)税制改正解説

1. 改正のポイント

(1) 改正の趣旨・背景

地域の特性・魅力を生かした地域社会創出に向け、各地方自治体の重点分野への設備投資を後押しするため、要件等を見直した上、その適用期限を3年間延長する。

(2) 内容

項目 改正前 改正後
適用対象法人 一定の地域で一定の事業を行う法人(青色申告法人) 改正なし
適用要件 ① 地域経済牽引事業計画について都道府県の承認を受けること
② 承認された事業計画に基づき、特定地域経済牽引事業施設等を新設又は増設し、事業の用に供すること(本制度の対象となる金額の上限は80億円)
③ 地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律による一定の基準に適合することについて、国の確認を受けること
改正なし
一定の基準
(主務大臣の確認要件)
通常類型 事業の先進性の確認に当たっては、投資収益率又は労働生産性の伸び率が一定水準以上であることが見込まれることを確認すること 運用上、事業の先進性の確認に当たっては、投資収益率又は労働生産性の伸び率が一定以上であることの確認を不要とする
※先進性の確認については、先進性が認められない事業の明確化、その他の評価委員の評価精度の向上に向けた措置を講じて行う
サプライチェーン類型 海外に生産拠点が集中している一定の製品の製造をすること及びその地域経済牽引事業計画が実施される都道府県の行政区域内でその製品の承認地域経済牽引事業者の取引額の一定水準以上の増加が見込まれることを確認すること(特定重要物資として指定された物資の製造に係る事業については該当しない) 対象となる事業類型から除外
特定非常災害に関する特例 一定の事業の実施場所が特定非常災害により生産活動の基盤に著しい被害を受けた地区である場合には、その計画承認日が特定非常災害発生日から1年を経過していないときは、一定の基準を満たすものとする 改正なし
適用対象資産 機械装置・器具備品 建物・附属設備・構築物 機械装置・器具備品 建物・附属設備・構築物
課税特例の要件 ① 先進性を有すること(特定非常災害で被災した区域を除く)
② 設備投資額が2,000万円以上
③ 設備投資額が前事業年度減価償却費
(※1)の20%以上であること(※1)対象事業者が連結会社である場合にあっては、同一の連結の範囲に含まれる他の全ての会社の減価償却費を合算
④ 対象事業の売上高伸び率が、0を上回りかつ過去5年度の対象事業に係る市場規模の伸び率より5%以上高いこと
⑤ 旧計画が終了しておりその労働生産性の伸び率4%以上かつ投資収益率5%以上
① 先進性を有すること(特定非常災害で被災した区域を除く)
② 設備投資額が1億円以上
③ 設備投資額が前事業年度減価償却費(※1)の25%以上であること
④ 対象事業の売上高伸び率が、0を上回りかつ過去5年度の対象事業に係る市場規模の伸び率より5%以上高いこと
⑤ 旧計画が終了しておりその労働生産性の伸び率4%以上かつ投資収益率5%以上
⑥ 労働生産性の伸び率又は投資収益率が一定水準以上となることが見込まれること
税制措置
(選択適用)
特別償却 ① 原則(②以外)
基準取得価額×40%
基準取得価額 ×20% ① 原則(②以外)
基準取得価額×35%
改正なし
② 上乗せ措置(次頁の要件を満たす場合)
基準取得価額×50%
②上乗せ措置次頁の要件を満たす場合)
改正なし
税額控除 ① 原則
基準取得価額×4%
② 上乗せ措置(次頁【要件1】を満たす場合)
基準取得価額×5%
③ 上乗せ措置(次頁【要件2】を満たす場合)
基準取得価額×6%
基準取得価額×2% ① 原則
基準取得価額×4%
② 上乗せ措置
(次頁【要件1または要件3】を満たす場合)
基準取得価額×5%
③ 上乗せ措置(次頁【要件2】を満たす場合)
基準取得価額×6%
改正なし
控除限度額:法人税額×20% 改正なし
上乗せ 要件

【上乗せ要件1】
下記ABを満たす
A:(a)または(b)のいずれかを満たす
(a) 直近事業年度の付加価値額増加率が8%以上
(b) 対象事業において創出される付加価値額が3億円以上、かつ、事業を実施する企業の前事業年度と前々事業年度の平均付加 価値額が50億円以上
B:労働生産性の伸び率5%以上(※2)、かつ、投資収益率が5%以上となることが見込まれること
(※2)中小企業基本法の中小企業者については労働生産性の伸び率は4%以上

【上乗せ要件2】
上記要件1を満たした上で、次のC~Eを全て満たす
C:産業競争力強化法の特定中堅企業(※3)
D:パートナーシップ構築宣言の登録をしている
E:設備投資額が10億円以上
(※3)特定中堅企業者とは、産業競争力強化法において規定される従業員数や雇用創出能力等を有する企業

【上乗せ要件1】
要件A(a)について、対象事業が1億円以上の付加価値額を創出することが見込まれることを追加

【上乗せ要件2】
改正なし

【上乗せ要件3】次のF~Iのすべてを満たした場合
F:承認地域経済牽引事業がその地域で次の条件を満たすものとして指定された業種に該当すること又は該当する事業を行う事業者と直接の取引関係を有する一定の事業に該当すること
(a) その地方公共団体におけるその業種の付加価値額の増加率又は付加価値額のその県内総付加価値額に占める割合が全国平均に比して一定水準以上
(b) その地方公共団体におけるその業種の売上高の総額、就業者の総数又は給与の総額いずれかについて、直近5年間の伸び率が10%以上
(c) その地方公共団体において、その業種の振興に関する具体的な目標等を定めており、予算措置等の具体的な取り組みが実施されている
G:施設又は設備を構成する減価償却資産の取得予定価額合計額が10億円以上
H:その事業が1億円以上の付加価値額創出が見込まれ
I :労働生産性の伸び率及び投資収益率が一定水準以上となることが見込まれる

 

 

2. 適用時期

2025(令和7)年4月1日から2028(令和10)年3月31日までの間に事業の用に供した資産に適用される。 (適用期限3年間延長)

 

3. 影響・対応策

  • サプライチェーンの強靭化に資する類型が、対象から除外される。
  • 設備投資規模が改正前の2,000万円から1億円に上昇し、かつ、前事業年度の減価償却費の25%以上となるため、 適用可能な設備投資が限られることとなる。 
  • 上乗せ要件が新たに追加され、該当しない場合には、機械装置等の特別償却の割合が35%に引下がる。

 

4. 実務の留意点

  • 各地方公共団体が策定する「基本計画」について、改正内容に基づいた修正等がなされるか今後詳細を確認する 必要がある。
  • 今回追加される上乗せ要件について、業種が指定されるため、各地方公共団体ごとに税制を適用可能か判断する 必要がある。
  • 大綱上「高成長投資枠」に対する新たな類型の追加を行うと記載があるが、新たな上乗せ要件の追加のみとなり明 確な記載がないため今後詳細を確認する必要がある。

 

◼️ 適用を受けるための手続き ※手続きについては改正なし

地域未来投資促進税制の適用を受けるための手順は次のとおり

① 着工前(杭打ち前)に都道府県が策定した基本計画に則した地域経済牽引事業計画について都道府県から承認を 受ける

② 承認後に先進性等に関する主務大臣による確認の申請をし、設備等の取得前に確認を受ける

③ 対象設備を取得し対象事業の用に供する

 

 

 

内容につきましては、「令和7年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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