新リース会計基準に関連する税制改正
速報 2025年度(令和7年度)税制改正解説
1. 改正のポイント
(1) 趣旨・背景
令和6年9月13日に企業会計基準委員会は、我が国リース会計基準について国際的な整合性の観点等から、借り手側におけるオペレーティング・リース取引について、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を廃止するなどを主な改正点とする「リース取引に関する会計基準」等(以下、「新リース会計基準」)を公表した。税制改正大綱において、税務上の取り扱いは従来と大きな変更がなく、会計との乖離が生じることが明らかになった。
(2) 内容
税制改正大綱で示された内容によると、税法上のリース取引及びリース以外の賃貸借取引の取り扱いについては従来の取り扱いから大きな変更はない。
会計処理において、新リース会計基準を適用する場合には税法上の処理との不一致について税務申告書において調整を実施する必要がある。
2. 新会計基準のポイント
(1) 適用時期
2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首(※1)から適用される。
※1 2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用可能
(2) 影響
新リース会計基準を適用する企業(※2)が行うリース取引の借手の会計処理(※3)に影響がある。
※2 新リース会計基準の適用対象は、上場企業など金融商品取引法の適用を受ける企業グループ各社と、会社法上の大会社など会計監査人を設置する企業で、いわゆる監査法人等の会計監査を受ける企業である。
※3 リース取引の貸手の会計処理は、以下の点を除いて変更がなく基本的には従来の会計基準の定めが踏襲される。
・ 収益認識に関する会計基準との整合性を図る点、・リースの定義及びリースの識別
(3) 実務上のポイント
新リース会計基準を適用する企業の借手のリース取引の会計及び税務処理の違いは以下の通りである。
- 新リース会計基準では、従来の基準のオペレーティング・リース取引についても、「使用権資産」及び「リース負債」が計上される。
- 「使用権資産」は減価償却費により費用配分を行い、「リース負債」はその負債に係る利息相当額を原則として利息法により配分する。
- 他方、法人税法上はオペレーティング・リース取引について従前通り「賃貸借処理」によることから、申告調整が必要となる。
- 会計と税務の不一致が発生する場合の申告調整について次項に例示している。
(4) 設例による解説
【前提条件】
- リース取引開始日:2025年4月1日
- リース期間:5年(合理的に確実な期間)
- リース料総額:60,000千円(毎年の支払リース料:12,000千円)
- 割引率:2%
- 顧客及びサプライヤーは、契約はリースを含むと判断した
- 所有権移転条項及び割安購入選択権:なし
- 借手の付随費用:ゼロ
- 借手の見積残存価額:ゼロ
<金額の算定>
<会計処理及び税務上の処理>(1年目)
新リース会計基準(会計上の仕訳) | 法人税法(税務上の仕訳) |
(借方)使用権資産 56,562千円 /(貸方)リース負債 56,562千円 | – |
(借方)減価償却費 11,312千円(※1)/(貸方)使用権資産 11,312千円 (借方)リース債務10,869千円 /(貸方)現金預金12,000千円 (借方)支払利息1,131千円(※2) |
(借方)支払賃借料12,000千円 (貸方)現金預金12,000千円 |
(※1)使用権資産 56,562千円÷5年≒11,312千円(※2)リース債務 56,562千円×2%≒1,131千円
<別表調整>(1年目)
内容につきましては、「令和7年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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