グローバル・ミニマム課税への対応

速報 2025年度(令和7年度)税制改正解説

1. 改正のポイント

国際的な法人税引下げ競争を防止するため、国際的に導入が進められているグローバル・ミニマム課税(各国ごとに最低15%以上の課税を確保するための制度)の3つのルール(下図①~③)のうち、残りの2つ(下図②、③)が法制化された。

グローバル・ミニマム課税は直前4対象会計年度(最終親会社等の連結財務諸表の会計年度)のうち、2年度以上の連結総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループ(以降「特定多国籍企業グループ」という)に適用される。

 

グローバル・ミニマム課税の概要

① 所得合算ルール(IIR):海外子会社等の実効税率が15%未満の場合に、15%となるまでの差額を日本親会社に追加課税。2023(R5)年度改正で法制化済。

 

【 今年度改正で法制化 】

軽課税所得ルール (UTPR):海外親会社等の実効税率が15%未満の場合に、15%となるまでの差額を日本子会社等に追加課税。IIRが適用できない場合の補助的制度。

 

国内ミニマム課税 (QDMTT):日本法人の実効税率が15%未満になった場合に、15%となるまでの差額を日本法人に追加課税。他国IIR・UTPRの追加課税を防止する制度。

 

3つのルールの法制化時期、適用時期の状況は以下のとおりである。

項目 法制化時期 適用時期 コメント
① 所得合算ルール
(IIR)
2023(R5)年度改正 2024(R6)/4/1以後開始する対象会計年度 ・情報申告制度も同時に法制化済
・申告期限1年3ヶ月(一定の場合1年6ヶ月)※1
② 軽課税所得ルール
(UTPR)
2025(R7)年度改正
(今年度改正)
2026(R8)/4/1以後開始する対象会計年度 ・IIRの情報申告にUTPRに関する事項が追加※2
・申告期限1年3ヶ月(一定の場合1年6ヶ月)※1
③ 国内ミニマム課税
(QDMTT)
2025(R7)年度改正
(今年度改正)
2026(R8)/4/1以後開始する対象会計年度 ・情報申告制度も今年度改正で法制化※2
・申告期限1年3ヶ月(一定の場合1年6ヶ月)※1

※1 情報申告制度の申告期限も同じ、※2 適用時期は2026(R8)/4/1以後開始する対象会計年度

 

2. 影響・対応策

  • 海外の最終親会社がグローバル・ミニマム課税未導入国所在の場合、軽課税所得ルール(UTPR)の影響について検討を行うことが望ましい。また、情報申告の要否についても検討を行う必要がある。
  • 自社が最終親会社等に該当しない場合でも、特定多国籍企業等グループに属する内国法人は国内ミニマム課税(QDMTT)の影響について検討を行うことが望ましい。また、情報申告の要否についても検討を行う必要がある。

 

3. 実務のポイント

  • 軽課税所得ルール(UTPR)、国内ミニマム課税(QDMTT)のいずれもOECD等での議論に沿った内容になると考えられるが、適用免除規定の詳細などは今後の法案等の確認が必要である。
  • グローバル・ミニマム課税についてOECD等での議論が継続している部分もあるため、今後の議論を確認することが望ましい。
  • 軽課税所得ルール(UTPR)、国内ミニマム課税(QDMTT)の対応にはグループ他社の情報が必要となる。自社が最終親会社に該当しない外資系企業等については、必要な情報共有を受けることができるかが実務上の課題となり得る。

 

 

内容につきましては、「令和7年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

「速報2025年度(令和7年度)税制改正解説」へ戻る
「税制改正解説」へ戻る
「インサイト」へ戻る

税制改正の最新情報など、山田&パートナーズの税務情報のニュースレター登録は以下から