エンジェル税制の拡充

速報 2025年度(令和7年度)税制改正解説

1. 改正のポイント

(1) 趣旨・背景

本制度の課題である、株式譲渡益の発生した年にスタートアップへ投資を行う必要がある点について、スタートアップへの再投資をより促進する観点から譲渡益発生年の翌年にスタートアップ投資を行った場合に、譲渡益発生年に遡っ て投資する金額を譲渡益から控除する繰戻し還付制度を創設し、投資期間を最長2年に延長する。

他方、再投資非課税措置(20億円を限度)については、特定株式等を取得した年の翌年末までに特定株式等を譲渡した場合には課税を行う。

(2) 内容

① 繰戻し還付制度の創設

エンジェル税制(優遇措置B及びプレシード・シード特例)及び起業特例について繰戻し還付制度を創設し、投資期間を株式譲渡益発生年の翌年末まで(最長2年)とする。

居住者等が、特定株式等※1を払込みにより取得した場合に、その取得をした年において生じた特定株式控除未済額※2があるときは、所轄税務署長に対し、その取得した年の前年分の所得税額のうち当該特定株式控除未済額に対応する部分の金額の還付を請求することができる※4。

※1 特定中小会社が発行した株式、特定株式会社が設立の際に発行する株式及びその他の一定の株式をいう。
※2 その年中の一定の特定株式等の取得価額(※3)から一般株式等に係る譲渡所得等の金額と上場株式等に係る譲渡所得等の金額との合計額を差し引いた金額とする。
※3 特定株式等の取得価額は、20億円を超える場合には、20億円とする(プレシード・シード特例及び起業特例に限る。)。
※4 居住者等は、特定株式等を払込みにより取得をする見込みである旨その他事項を記載した書類を添付して、投資年の前年分の確定申告書を提出期限までに提出して いる等の要件を満たす必要がある。

 

② 投資年の翌年中に特定株式等を譲渡した場合(優遇措置B以外の取得価額の調整)

居住者等が、特定株式等を払込みにより取得した年の翌年に、特定株式等を譲渡した場合は、譲渡所得の計算における取得価額が調整される。
<譲渡所得の計算式>
特定株式等の譲渡収入ー(特定株式等の取得価額※1-本税制の適用を受けた金額※2※3)

※1,2 20億円を超える場合には、20億円とする。
※3  現行のプレシード・シード特例(又は起業特例)の適用額と、改正後のプレシード・シード特例(又は起業特例)の繰戻し還付の適用額の合計額とする。

 

2. 適用時期

2026(令和8)年以降の特定株式等の取得に適用する。

 

3. 影響・対応策

エンジェル税制(優遇措置B及びプレシード・シード特例)及び起業特例の投資期間が最長2年に延長することにより、個人投資家の更なる利用が拡大されることが期待される。

 

4. 実務のポイント

特定株式等の取得の前年、2025(令和7)年分以降の所得税の確定申告書に一定の書類を添付して提出する必要がある。

 

<エンジェル税制(プレシード・シード特例)及び起業特例>

※1  一般株式等及び上場株式等
※2 その年分の一般株式等に係る譲渡所得等の金額から控除し、控除しきれない金額があるときは、上場株式等に係る譲渡所得等の金額から控除する。 なお、控除しきれない金額がある場合には、翌年以後3年間損失を繰り越すことができる。
※3 XX年(特定株式等の取得の翌々年以降)は、改正前と同様の取り扱いであると考えられる。

 

 

内容につきましては、「令和7年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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