給与収入が高い年金受給者の合計控除額の調整

速報 2025年度(令和7年度)税制改正解説

1. 改正のポイント

(1) 趣旨・背景

年金課税については、公的年金等控除が給与所得を得ている年金受給者にも適用されるため、給与所得控除と公的年金等控除の両方の適用により、同じ収入額でも給与収入のみの者と、給与収入と公的年金等を有する者の間で税負担が異なることについて、公平性の観点から指摘がなされてきた。

在職老齢年金支給停止調整額の引上げが行われると、給与収入を得つつより多くの年金を受け取る者が増えることが想定され、税負担の公平性の問題がより大きく顕在化する。

(2) 内容

給与所得控除と公的年金等控除の合計額の上限を280万円とする。

 

【給与収入と、給与収入+公的年金等収入が同額の場合の控除額の比較】

◆ 改正前

(単位:万円)

収入額 300 500 830 900
給与所得控除額(給与収入のみの場合) 98 144 193 195
給与所得控除額+公的年金等控除額
(給与収入と公的年金等収入がある場合※)
165 208 280 290

 

◆ 改正後

(単位:万円)

収入額 300 500 830 900
給与所得控除額(給与収入のみの場合) 98 144 193 195
給与所得控除額+公的年金等控除額
(給与収入と公的年金等収入がある場合※)
165 208 280 280

 

※65歳以上で公的年金収入等は200万円で固定と仮定。この他、所得金額調整控除の適用がある

 

2. 適用時期

在職老齢年金制度の見直しの帰趨を踏まえ、2026年度(令和8年度)税制改正において法制化を行う。

 

3. 在職老齢年金制度とその動向

在職老齢年金制度とは、厚生年金の適用事業所で就労し、一定以上の賃金を得ている60歳以上の厚生年金受給者を対象に、原則として被保険者として保険料負担を求めるとともに、年金支給を停止する仕組みをいう。

年金制度改革の中で在職老齢年金支給停止調整額(改正前は50万円)の引上等の見直しが行われた場合には、公的年金収入が増加する者には年金収入の増加と併せて手取りが減少しない範囲で、また、見直しによって年金収入に変化がない者については影響が生じないように検討が行われた結果、給与所得控除と公的年金等控除の合計額の上限を280万円とすることとなった。

 

 

内容につきましては、「令和7年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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