退職所得控除の調整規定等の見直し
速報 2025年度(令和7年度)税制改正解説
1. 改正のポイント
(1) 趣旨・背景
退職手当等を受け取った年の前年以前4年内に他の退職手当等を受け取ったことがある場合には、退職所得控除の計算上、勤続年数の重複を排除して計算を行い、また、確定拠出年金に係る老齢一時金(DC一時金)を受け取った年の前年以前19年内に他の退職手当等を受け取った場合にも、勤続年数の重複排除が適用される。定年の引き上げ等により、先にDC一時金を受給し5年以上経過後、退職手当等を受け取るケースも増え、この場合、勤続年数の重複排除は適用されず、いずれも退職所得控除を満額利用することができる。
今回、課税の公平性の観点から、重複排除に係る調整期間を延長する。
(2) 内容
① 退職手当等の一時金の支払を受ける年の前年以前9年内に、DC一時金を受給している場合には、退職所得控除の計算上、勤続年数等の重複排除調整の対象とする(改正前:4年内)。
② DC一時金に係る「退職所得の受給に関する申告書」の保存期間を10年とする(改正前:7年)。
③ 退職手当等を受け取る全ての居住者に係る退職所得の源泉徴収票について、税務署長への提出を一律義務化する(改正前:居住者である役員)。
2. 適用時期
上記①、②については、2026(令和8)年1月1日以後にDC一時金の支払いを受け、同日以後に支払を受けるべき退職手当等について適用される。
③については、2026(令和8)年1月1日以後に提出すべき退職所得の源泉徴収票について適用される。
3. 影響・対応策
DC一時金を60歳に受給するとした場合、退職による退職手当等の退職所得控除を満額利用できる歳が、65歳から70歳になる。
4. 改正内容(勤続年数の重複排除)
(1) 改正前
⚫︎退職手当等一時金②の支払を受けた年の前年以前4年内にDC一時金①を受給していないことから、退職手当等一時金②は勤続年数の重複排除調整を行わず、DC一時金①及び退職手当等一時金②のいずれも退職所得控除を満額利用できる。
(2) 改正後
⚫︎退職手当等一時金②の支払を受けた年の前年以前9年内にDC一時金①を受給していることから、退職手当等一時金②は勤続年数の重複排除調整を行い、退職所得控除を満額利用できない。
【 参考(改正なし)】
⚫︎DC一時金②を受給した年の前年以前19年内に、退職手当等一時金①の支払を受けていることから、DC一時金②は勤続年数の重複排除調整を行い、退職所得控除を満額利用できない。
内容につきましては、「令和7年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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