税のトピックス

2024年9月20日

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オーストラリア(豪州)の相続税と相続手続き

オーストラリア(豪州)の相続税と相続手続き

1. オーストラリアは富裕層の移住先として人気ナンバーワン

複数の調査機関が世界中の富裕層の移住先対象国のランキングを毎年発表しているが、ここ数年オーストラリアは常に1位をキープしています。また、一般財団法人ロングステイ財団が日本国内で実施しているアンケート調査「ロングステイ希望国・地域」においても毎年オーストラリアは移住希望先として上位にランクインしています。

オーストラリアが富裕層に移住先として選ばれる理由は、相続税や贈与税が無いという税制上の理由に加え、治安が良く、医療制度や教育制度なども含めた生活水準が高いことが理由として挙げられています。

また、海外移住までは考えていない富裕層の方々も、日本に居住しながらオーストラリアで預金や株式、不動産などの資産運用を行われている方が多くいらっしゃます。

そこで、本ニュースレターでは、オーストラリアにおける相続税や相続手続きについて解説いたします。

 

2. オーストラリアの相続税・贈与税

≪ 贈与税 ≫

オーストラリアには贈与税はありません。しかしながら、1985年9月20日以後に取得した財産を贈与した場合において、贈与時の時価が取得価額を上回る場合には、その差額であるキャピタルゲインについて所得税が課されます。

ただし、オーストラリア非居住者について課されるキャピタルゲインは主に不動産に限定されているため、日本居住者がオーストラリアの上場株式を贈与した場合については、贈与税も所得税も課されません。

≪ 相続税 ≫

オーストラリアには相続税もありません。また、相続の場合においては、贈与した
場合のキャピタルゲインに対する所得税の課税も原則行われません。

 

3. オーストラリアの相続手続き

オーストラリアの相続手続きは被相続人の遺言があるかどうかで手続きが異なります。

≪ 遺言がある場合 ≫

被相続人の遺言がある場合、Probate(プロベート)と呼ばれる手続きにより相続人等への財産の承継を行います。

遺言書により指定された遺言執行人(親族のみならず、弁護士などの専門家が指定されていることもあります)が、遺言執行の権限の付与を裁判所に申請し、裁判所の承認を得て遺産の整理(費用や債務の支払い、財産の分配など)を行います。

なお、日本とオーストラリアどちらの法律に従って遺言書を作成すべきですか?
というご質問をいただくことがあります。結論としては、それぞれの国に所在する財産はその国の法律に従って遺言書を作成するのが望ましいと考えられます。
法的には日本、オーストラリアのいずれにおいてもオーストラリアの法律、日本の
法律で作成した遺言書は有効とされていますが、実際の相続手続きの現場においては手続きが煩雑になります。

≪ 遺言が無い場合 ≫

被相続人の遺言が無い場合には、Letters of administrationという手続きにより相続人等への財産の承継が行われます。

相続人が裁判所に対して遺産管理人の選任およびその遺産管理人に遺産を管理
する権限の付与を申請し、裁判所の承認を得て遺産の整理を行います。

被相続人が日本居住者であった場合には財産の名義変更手続き等において日本の弁護士の意見書が求められる等、手続きが煩雑になりますので、遺言書を作成
されることをお勧めします。

≪ 裁判所への手続きが不要なケース ≫

遺産の額が少額な場合や、以下のような財産の取得者が事前に特定されているケースではProbateLetters of administration手続きは不要となります。

  • 共同保有(Joint tenancy)により所有している不動産
  • 共有名義の銀行口座(Joint account
  • 生命保険金

オーストラリアの相続法は州によって異なりますので、遺言書の作成や実際に相続が起きた場合などは必ずオーストラリアの法律の専門家に相談されることをお勧めいたします。

 

執筆:東 博士 azumah@yamada-partners.jp

  • 東 博士

    この記事の著者

    東 博士
    税理士法人山田&パートナーズ
    シニアマネージャー 税理士・中小企業診断士

    2005年入社。日本での相続、法人業務経験を経て、2014年から2018年までシンガポール及びフィリピンに駐在。日本帰国後は米国留学を経て2023年より福岡事務所にてM&A業務や日本人資産家の相続対策支援など幅広い税務業務に従事勤務。
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