海外デスクレポート

2024年9月6日

非税務登録事業者に対する取り締まりの強化 (カンボジア)

非税務登録事業者に対する取り締まりの強化 (カンボジア)

1. 非税務登録事業者に対する取り締まりの強化

カンボジア経済財政省(MEF: Ministry of Economy and Finance)は、非正規に事業を行う個人および事業主に対し、税務コンプライアンスの遵守を求める政令の実施に向けたガイドラインを発布しました。本ガイドラインの目的は、カンボジア国内における非正規事業を排除しすべての納税者に対し正規に事業活動をさせることによって、適正に税収を確保し、経済基盤を確立することです。税務登録を行わず実施している経済活動すべてに適用し、個人、小規模事業主、所得があるのに納税申告していない会社を対象とします。カンボジアにおいて事業活動を行うすべての個人及び事業主は税務登録が必要です。税務登録を行うためには、正確な税額を把握するため身分証明書と収入証明等の書類の提出が必要となります。自主的に税務登録する場合、税務上の優遇措置が与えられます。税務上の優遇措置とは、税率の減額、一定期間の免税、その他ベネフィットを含みます。一方、コンプライアンスを遵守しないと、ペナルティが科せられます。ペナルティには、罰金、未納税額に対する利息、法的措置が含まれる可能性があります。ペナルティの度合いは、違反の度合いや期間によって変わります。

 

またカンボジア政府は、非正規事業から正規事業へ改める個人や企業に対し支援を検討しています。具体的には、トレーニング、金銭的支援、税コンプライアンス遵守のためのリソースへのアクセス等を含みます。今後、カンボジアにおいては、非正規事業主を積極的に監視していきます。国内における非正規事業者を特定し、定期的な調査、監査、場合によってはその他の執行手段にて取り締まりを行っていきます。納税義務が生じていたと考えられる特定の期間に遡り調査は実施され、定期的に進捗をレビューし、必要な調整が実施される形となります。

 

本政令の実施をもって、カンボジアの全体的な経済環境を改善し、非正規に事業活動を行う事業主を取り締まり、税逃れを抑止するため取り組んでいく方針です。

 

2. 納税者の区分(2021112日発布プラカス009号)

カンボジアにおいて納税者の区分は3つあります。

非正規に事業活動を行っている個人事業主、もしくはジョイントベンチャーが税務登録を求められた場合において、以下のいずれかの区分にて税務登録を強制されることが考えられます。

 

Small Taxpayers(小規模納税者)

  1. 農業、サービス、商業部門において、年間収益が25000万リエル(約62,500米ドル)から10億リエル(約250,000米ドル)、または年間資産総額が2億リエル(約50,000米ドル)から10億リエル(約250,000米ドル)
  2. 産業部門において、年間収益が25000万リエル(約62,500米ドル)から16億リエル(約400,000米ドル)、または年間資産総額が2億リエル(約50,000米ドル)から20億リエル(約500,000米ドル)
  3. その年において3か月連続の売上高が6000万リエル(約15,000米ドル)以上、もしくは今後の売上予想が3か月連続で6000万リエル(約15,000米ドル)以上
  4. 5人から49人の従業員を雇用
  5. 国家予算を利用した商品やサービスの供給についての調査、コンサルティング、入札に参加する者

Medium Taxpayers(中規模納税者)

  1. 農業部門の年間収益が10億リエル(約250,000米ドル)から40億リエル(約1,000,000米ドル)、または年間資産総額が10億リエル(約250,000米ドル)から20億リエル(約500,000米ドル)
  2. サービス、商業部門の年間収益が10億リエル(約250,000米ドル)から60億リエル(約1,500,000米ドル)、または年間資産総額が10億リエル(約250,000米ドル)から20億リエル(約500,000米ドル)
  3. 産業部門の年間収益が16億リエル(約400,000米ドル)から80億リエル(約2,000,000米ドル)、または年間資産総額が20億リエル(約500,000米ドル)から40億リエル(約1,000,000米ドル)
  4. 50人から199人の従業員を雇用

Large Taxpayers(大規模納税者)

  1. 農業部門の年間収益が40億リエル(約1,000,000米ドル)以上、または年間資産総額が20億リエル(約500,000米ドル)以上
  2. サービス、商業部門の年間収益が60億リエル(約1,500,000米ドル)以上、または年間資産総額が20億リエル(約500,000米ドル)以上
  3. 産業部門の年間収益が80億リエル(約2,000,000米ドル)以上、または年間資産総額が40億リエル(約1,000,000米ドル)
  4. 外国企業の支店
  5. 多国籍企業の子会社
  6. QIPによる投資優遇措置を受ける会社

 

現行の制度においては、登録事業主である雇用主に雇用される従業員の給与税、およびフリンジベネフィット税を除き個人所得税の制度が整備されていないカンボジアですが、今後は、取り締まりが強化されることが予想されます。

 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。

 

【 この記事の著者 】

坂本 佳代

税理士法人山田&パートナーズ 海外事業部 
・カンボジア税法ディプロマ資格者
・カンボジア公認会計士・監査士協会(The Kampuchea Institute of Certified Public Accountants and Auditors)アフィリエイトメンバー登録者

2014年に日系コンサルティングファームに入所、2016年よりインド・バンガロールに駐在。2019年よりカンボジア・プノンペンに駐在。インド、カンボジアに会計事務所責任者として常駐していた約8年、現地日系進出企業の様々な悩みにワンストップで対応。(会計税務全般、進出及び撤退コンサルティング、登記及びライセンス登録業務、労務、国内取引及びクロスボーダー取引にかかる税務アドバイザリー、現地税務当局との折衝、抗弁書作成等の税務調査対応の経験多数)2024年に税理士法人山田&パートナーズに入社。

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