2011年10月3日
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最高裁 改正税法の適用、施行前でも「合理的」なら合憲
改正税法が施行日以前の取引にも適用されることが憲法84条に違反するか否かの判断が争われてきた事件で最高裁は9月22日、「合理的」なら合憲との初判断を示しました。 この事件は、平成16年度税制改正により設けられた土地・建物等に係る譲渡損失の損益通算規制措置が、改正法の施行日(16年4月1日)前に行われた土地・建物等の譲渡にも適用されるのは、納税者に不利益な遡及立法であり、租税法律主義を規定した憲法84条に違反する等と納税者が主張して争われたものです。 最高裁は、暦年当初からの適用を定めた本改正が「憲法84条の趣旨に反するか否かについては、上記諸事情を総合的に勘案した上で...暦年当初からの適用による課税関係における法的安定性への影響が納税者の租税法規上の地位に対する合理的な制約として容認されるかどうかという観点から判断するのが相当」としました。 その上で、暦年当初から適用することは、不動産の駆け込み売却を防止する目的があり「具体的な公益上の要請に基づくものであった」と指摘しています。 また納税者の地位については、「損失が生じた場合にのみ損益通算を認めることは不均衡であり、これを解消することが適正な租税負担の要請に応えることになる」とされるなど政策的見地からの否定的な評価がされており、本改正は納税者の地位に対する合理的な制約として容認されるべきもの、と判断しています。 従ってこれらの諸事情を総合的に勘案すると、暦年当初からの適用を定めた本改正は、納税者の地位に対する合理的な制約として容認されるものであり、憲法84条の趣旨に反するものということはできないと判示し、上告を棄却しています。 9月30日にも、同様の事案について憲法違反を否定、上告を棄却する旨の判決があり、「長期譲渡損失の損益通算を不可とする改正税法の遡及適用は合憲」という決着がつきました。