2012年7月9日
- 税の最新情報
11年度国税局 脱税摘発192億円
全国の国税局が、11年度に強制調査(査察)で摘発した脱税事件は189件、脱税額は192億円に上ったことが国税庁のまとめでわかりました。
公表データによると、11年度に全国の国税局査察部が着手した事案は195件、前年度の未処理事案と合わせて処理した件数は189件で、脱税総額は約192億2千万円となりました。前年度と比べると処理件数や着手件数、脱税総額はいずれも減少しており、1件当たりの脱税額も1億200万円(前年比1,300万円減)と減少しています。
このうち検察庁に告発したのは117件(同39件減)、脱税総額は156億8,600万円(同56億2,900万円減)と共に減少したため、1件当たりの脱税総額も減少し、事件の小型化がうかがえます。経済状況悪化の影響を受け、大型の脱税事件が減少したことが要因と考えられます。
業種別に告発件数をみると、「建設業」の9件が最も多く、次に「商品・株式取引」、「人材派遣業」がともに7件、「食品卸」と「情報提供サービス」の6件と続いています。経済社会情勢を反映し、この数年間多かった不動産業が減少する一方、「食料卸」や「情報提供サービス」での告発が目立ちました。
税目別にみると、法人税は64件(脱税総額79億2,300万円)、所得税35件(同41億1,100万円)に次いで、消費税が8件(同7億2,700万円)となっています。
脱税の手段・方法としては、これまでに引き続き、売上除外や架空の原価・経費の計上がありました。消費税事案では、課税仕入れに該当しない人件費を課税仕入れとなる外注費に科目仮装していたものや、源泉所得税事案では、従業員等から所得税を徴収していたにもかかわらず、一切納付していなかったものがありました。
国際取引を利用した事案として、(1)国内で行っていたFX取引を英領ヴァージン諸島の法人の取引に仮装した上、得た資金をシンガポールに送金し、留保していたもの、(2)フランスの取引先に対する貸付金を支払手数料に仮装して計上していたもの、(3)ベトナムへ中古農機具を輸出していた業者が、消費税の申告において、架空の輸出免税売上とそれに見合う架空仕入を計上する方法により、不正に消費税の還付を受けていたものなどがあったようです。
国税庁は、国際取引が関係した事案にも的確に対応するため、11年度に処理した事案のうち、13の事件で租税条約等の規定に基づく情報交換を外国税務当局に要請しました。また、外国税務当局からの要請により、犯則調査を実施し情報を提供したもののありました。
情報交換をさらに一歩進め、調査展開を図るため、日本とアメリカは7月2日、「アメリカ合衆国と日本国の権限のある当局間の同時査察調査実施取決め」に合意しました。同時査察調査は、日米両国において関連する納税者等に、それぞれ犯則嫌疑がある場合に、両国の査察部門が並行して、同時に査察調査を行うものです。日米の協力により、より効果的な調査が期待できそうです。