2013年3月18日
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国が上告断念、株式保有特定会社の25%ルール訴訟
相続の際の非上場株式の評価をめぐり、約50億円の追徴課税の取り消しを認めた東京高裁判決について、国が上告を見送ったことが分かったという報道がありました。
本件は、非上場会社であるA社の株式を相続した納税者が行った相続税の申告に対して、税務署側が、A社の株式保有割合が25.9%であることから、A社は「株式保有特定会社」に該当するとして、当初申告に加えて約50億円の追徴課税を行ったものです。東京地裁、控訴審の東京高裁共に、A社は「株式保有特定会社」に該当しないという納税者の主張を認めています。
裁判では、総資産の25%以上に相当する株式を保有する法人「株式保有特定会社(株特会社)」に関する評価方法を定めた国税庁の通達が妥当かどうかが争われていました。
この通達は、平成2年頃、上場株式と非上場会株式の評価方法の違いを利用した租税回避行為が見られたことから定められました。通達発遣時から現在まで、株式保有割合の25%で判定するというルールは変更されていません。
判決では、通達の判定基準について、創設当時に合理性はあったが、相続発生時には合理性を有しているとはいえないとしています。
通達発遣時と本件相続発生時の状況を比較すると、下記のような違いがあります。
○通達発遣時(平成2年)の状況
・資本金10億円以上のすべての業種の営利法人(金融業及び保険業を除く)の
株式保有割合 7.88%
・独占禁止法上、持ち株会社は認められていない。
○相続発生時(平成15年)の状況
・資本金10億円以上のすべての業種の営利法人(金融業及び保険業を除く)の
株式保有割合 16.31%
・独占禁止法上、持ち株会社 は一部容認されている。
高裁判決は、これらの状況を踏まえ、「株式保有割合25%という数値は、もはや資産構成が著しく株式に偏っているとまでは評価できなくなっていたといわざるを得ない。」とし、相続発生時における通達の合理性を否定しました。
また、株式保有割合が約25.9%にとどまるA社について、この通達の判定基準をそのまま適用して株特会社に該当するものとすることはできないとしています。そして、株特会社に該当するか否かは、その株式保有割合に加えて、その企業としての規模や事業の実態等を総合考慮して判断するのが相当であるとしています。その上で、A社の企業としての規模や事業の実態等は上場企業に匹敵するものであり、A社株式の価額の評価に関しては、租税回避行為の弊害を危惧しなければならないというような事情はうかがわれないとして、A社は株特会社に該当するとは認められないと判示しました。
国は、地裁、高裁と主張が退けられ、上告を断念しました。国の上告断念を受けて、国税庁は通達の見直しを行うと考えられます。「25%」という割合自体を見直すのか、「租税回避と認められる場合」などの限定要件を付すのか、あるいは抜本的な見直しが行われるのか。今後の動向が注目されます。