2020年5月28日
- 税の最新情報
【新型コロナ関連】チケット払戻放棄による寄附金控除
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために中止された一定のイベントの入場料等について、観客等が払戻しを受けないことを選択した場合に税優遇を受けられるようになりました。 今回は、この制度についてご紹介いたします。
新型コロナウイルス感染症に関する政府の自粛要請を受けて、多くの文化芸術、スポーツイベントの開催が中止され、主催者側は多額の損失を被っています。 この状況を踏まえ、文化芸術・スポーツ活動への支援の動きを後押しするため、観客等が払戻請求権を放棄した場合には、その金額分を「寄附」とみなし、所得税の寄附金控除(所得控除又は税額控除)制度の適用が受けられる制度が設けられました。
本制度の詳細は、下記のとおりです。
● 対象となるイベント等
次のようなイベント等が対象となります。
・文化芸術又はスポーツに関するもの
(例)
音楽コンサート、エンターテインメント、伝統芸能などの公演イベント
プロスポーツの試合、マラソン大会などの参加型スポーツイベント
映画館、博物館(美術館・動物園・水族館を含む)、テーマパーク等の前売りチケットで払戻請求権が発生したもの
・新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により、現に中止等されたもの
主催者の都合など他の要因によって中止等となったイベントについては対象となりません。
・令和2年2月1日から令和3年1月31日までに開催された又は開催する予定であったもの
・日本国内で開催された又は開催する予定であったもの
(仮想空間上でのみ開催するイベント等は対象外)
・主催者が、文化庁・スポーツ庁より指定を受けたもの
文化庁・スポーツ庁のHPにて随時公表
指定を受けるのは、「イベント」であり、「主催者」ではありません。
したがって、指定を受けたイベントの入場料金を超えた金額を主催者に寄附しても、その部分は本制度の対象とはなりませんのでご注意ください。
(主催者が公益法人等の場合には、既存の寄附税制の枠組みで寄附金控除を受けることが可能なケースがあります。)
● 対象となる者
寄附金控除を受けることができるのは、イベント等の入場料金のチケット代金を負担した者となります。
学生や専業主婦の方のチケット代金を親や配偶者が負担している場合には、その負担している方が寄附金控除を受けることになります。
友人分のチケット代金を立て替えて購入した場合には、チケット代金を負担するのは友人ですから、友人が寄附金控除を受けることになります。
なお、 主催者への申請はチケット購入者が行います 。チケット購入者とチケット代金負担者が異なる場合には、申請書にチケット代金負担者を記載する必要があります(申請書は、申請者(チケット購入者)とチケット代金負担者を書き分けられる様式となっています。)。
申請書様式例
● 寄附金とみなされる金額
令和2年2月1日から令和3年12月31日までに、イベント等の入場料金の払戻請求権を放棄した場合において、その放棄した部分に相当する金額が寄附金とみなされる金額です。
・入場料金の一部の払戻しを受けている場合には、払戻しを受けずに放棄した部分のみが、本制度の対象となります。
・ 既に払戻しを受けていた場合には、払戻分を寄附することを連絡し、その後、実際に寄附を行うことにより、本制度の対象となることがあります。
・本制度は、イベントの開催前に参加予定者が実際に金銭を支出していたが、中止等となったことにより払戻請求権が発生していることが要件となります。そのため、予約は座席のみで、金銭の支払いは当日という場合には、入場料金等の支払義務が消滅したに過ぎず、払戻請求権が発生したとはいえないため、本制度の対象とはなりません。
・本制度は、イベントの主催者と参加予定者の間に発生している払戻請求権を対象としています。関係事業者(プレイガイドなど)がチケット発行に当たって参加予定者から徴収している手数料等は、払戻請求権には含まれず、本制度の対象にはなりません。
●所得税の控除
所得税の寄附金控除制度には、「所得控除」と「税額控除」の2種類があり、いずれかを選択して税優遇の適用を受けることができます。
本制度により軽減される所得税額は、下記の算式により計算されます。
所得控除:(対象チケット代金-2千円)×所得税率
税額控除:(対象チケット代金-2千円)×40%
所得税の最高税率(45%)が適用される高収入の方を除き、一般的には「税額控除」を適用した方が軽減される税額が大きくなります。
● 必要となる手続き
単に払戻しの手続きをせずに、払戻しを放棄しただけでは、本制度の適用を受けられません。本制度の適用を受けるためには、いくつかの手続きが必要です。
・【確認】イベント等が本制度の対象となるものであるか、確認をする。
・【連絡】主催者に払戻しを受けない意思を連絡する。
具体的な連絡方法は、主催者ホームページ等でご確認ください。
・【確定申告】必要な証明書(指定行事証明書、払戻請求権放棄証明書)を入手し、確定申告をする。