2019年4月18日
- 税制改正
個人版 事業承継税制の創設
個人版 事業承継税制の創設 ~小規模事業経営者の2025年問題を受けて~
平成31年度の税制改正で、個人事業者の事業用資産を後継者が相続した場合に課される相続税、または贈与を 受けた場合に課される贈与税の納税を猶予する制度が創設されました。
制度創設の趣旨
2025年には法人オーナーの50%以上が、個人事業者に いたっては70%以上が70歳以上になるという試算がされ ています。平成30年度の税制改正で、法人の事業承継を 円滑に進めるための税制の大幅な拡充と緩和が行われ、 法人オーナーが保有する株式についての承継を税制から バックアップする仕組みが出来上がりました。それを受 けて、個人事業者においても、円滑な世代交代を通じた 事業の持続的な発展が課題となっていることを踏まえ、 個人事業者の事業承継を促進するため、個人版の事業承 継税制が創設されました。
個人版事業承継税制の概要
この税制は、相続または贈与により後継者が特定事業 用資産を取得し、事業を継続して行う場合に、後継者が 取得する特定事業用資産に係る相続税・贈与税の納税を 猶予する制度です。2019年1月1日から2028年12月31日まで の間に発生した相続または贈与が対象となり、適用を受け るためには、2019年4月1日から2024年3月31日までの間に 承継計画書を、納税猶予適用後は相続税・贈与税の申告 期限から3年毎に継続届出書を提出する必要があります。
納税猶予制度適用の際の注意点
(1) 贈与税の納税猶予制度を適用する場合
特定事業用資産を贈与した者に相続が発生した場合に は、特定事業用資産を贈与時の時価で取得したものとみ なして相続財産に加算し相続税を計算します。そのため、 期間の経過とともに価値が減少する建物などの減価償却 資産については、相続時において贈与時よりも価値は減 少していますが、贈与時の時価で相続税を計算すること になるため注意が必要です。
(2) 小規模宅地等の評価減との選択適用
個人の事業で使用している土地を後継者が取得すると、 400m²まで評価額を80%減額できる小規模宅地等の特例が 適用できます。ただし、相続税の納税猶予制度との併用は できないため、どちらかを選択する必要があります。両者 の異なる点は、小規模宅地等の特例は相続財産の総額を 圧縮するため、他の相続人の相続税も減額されますが、相 続税の納税猶予制度は特定事業用資産を取得した後継者 の税額のみ猶予するので、後継者以外の相続税は減額さ れません。そのため、どちらの制度を適用するか、前もっ て検討する必要があります。
(2019年4月)
【執筆者】
税理士法人山田&パートナーズ
税理士 神戸事務所長
土井 健
税理士法人山田&パートナーズ
税理士
岩城 研祐