事業承継税制 ~納税猶予制度の見直し
速報 平成25年度(2013年度)税制改正解説
1. 改正の概要
- 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、要件の緩和、負担の軽減、手続きの簡素化などの改正がされます。
項目 | 内容 | 改正前 | 改正案 |
事前確認申請 | 経済産業大臣による事前確認 | 必要 | 不要 |
先代経営者要件 | 先代経営者の役員退任(贈与税) | 必要 | 代表者を退任(役員退任は不要) |
後継者要件 | 後継者と先代経営者の親族関係 | 必要 | 不要 |
適用対象となる 資産保有型会社 等の要件 |
常時使用従業員数 | 5名以上 | 5名以上(生計一親族を除く) |
3年以上継続して行う商品販売等における「資産の貸付け」の範囲 | 制限なし | 同族関係者等に対する貸付けを除く | |
経営承継期間内 (5年以内) の取消事由 |
常時使用従業員数の8割雇用確保の判定 | 毎年の報告基準日に判定 | 5年間の平均により判定 |
役員である贈与者の認定会社からの給与支給 | 納税猶予を取り消す | 納税猶予を取り消さない | |
経営承継期間内 及び期間経過後 の取消事由 |
「総収入金額ゼロ」における「総収入金額」の範囲 | 総収入金額 | 総収入金額 (営業外収益、特別利益を除く) |
納税猶予税額の 計算方法 |
債務、葬式費用がある場合 | 非上場株式等から債務・葬式費用を控除する | 非上場株式等以外の財産から債務・葬式費用を控除する |
上場株式等(保有割合3%以上)を認定会社である資産保有型会社等が保有する場合 | 当該上場株式等を含めて計算 | 当該上場株式等を含めず計算 | |
民事再生計画の認可決定等があった場合 | ー | その時点で納税猶予税額を再計算 (当初の猶予税額との差額は免除) |
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猶予税額の納税 (※) |
雇用確保8割未満による取消事由に係る猶予税額 | 金銭納付 | 延納・物納の適用可 |
経営承継期間(5年)経過後における取消事由に係る利子税 | 納税猶予期間全てにおける利子税を納付 | 経営承継期間内(5年以内)の利子税は免除 | |
適用のための 手続き |
株券不発行会社の株券の発行 | 必要 | 一定の場合には不要 |
申告書、継続届出書等に係る添付書類 | 必要 | 一定のものは提出不要 |
(※)利子税の割合は、「延滞税等の見直し」により、現行年2.1%から、年0.9%(特例基準割合が2%の場合)に引き下がる。
〇 平成27年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用される。
2. 実務上の留意点
- 経済産業大臣の事前確認制度の廃止により、先代経営者の急死等においても、納税猶予制度の適用を検討することができる。
- 先代経営者は、贈与後も役員として給与の支給を受けながら経営に参画し、後継者をサポートすることができる。
- 後継者は、親族以外から広く募ることができるが、遺言、相続税の2割加算などに留意が必要である。
- 雇用確保要件の緩和により、5年毎年の報告基準日において一時的な雇用減少により8割確保が満たせなくても納税猶予を継続できる。
- 資産保有型会社等に対する要件の見直しにより、同族関係者等による意図的な要件充足は厳しくなった。
- その他負担の軽減、手続きの簡素化などにより、納税猶予制度が利用しやすくなった。
3. 今後の注目点
- 既に経済産業大臣による確認、認定を受けている会社や納税猶予制度を適用している会社への改正の影響。
- 雇用確保要件の緩和における平均常時使用従業員数の算定方法。
- 株券不発行会社において株券発行が不要となる場合の一定の要件。申告書等に係る添付書類のうち提出が不要となる一定の書類。
内容につきましては、「平成25年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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