外形標準課税の拡大
速報 平成27年度(2015年度)税制改正解説
1. 改正の概要
- 外形標準課税の拡大として付加価値割及び資本割の税率が引上げられる一方、所得割の税率は引下げられます。
- 所得割の税率引下げに伴い、資本金1億円超の普通法人の地方法人特別税率が67.4%から152.6%へ引上げられます。
- 付加価値割の税率引き上げに伴い、給与等支給額を一定額増加したときは一定の金額を付加価値割の課税標準から控除する制度が導入されます(付加価値割における所得拡大促進税制)。
- 資本割の課税標準が、資本金等と「資本金+資本準備金」のいずれか大きい金額とされます(資本割の課税標準の見直し)。
- 外形標準課税の拡大に伴う負担増の軽減措置として、一定の金額を法人事業税額から控除する制度が導入されます(事業税が増加した場合の負担変動の軽減措置)。
【外形標準課税の対象法人(資本金1億円超の法人)】(※) 外形標準課税の対象外となる資本金1億円以下の法人については改正なし。
【法人事業税率の改正】
改正前 | 改正案 | |||
平成27年4月1日 以後開始事業年度 |
平成28年4月1日 以後開始事業年度 |
|||
付加価値割 | 0.48% | 0.72% | 0.96% | |
資本割 | 0.2% | 0.3% | 0.4% | |
所得割 | 年400万円以下の所得 | 3.8% (2.2%) |
3.1% (1.6%) |
2.5% (0.9%) |
年400万円超800万円以下の所得 | 5.5% (3.2%) |
4.6% (2.3%) |
3.7% (1.4%) |
|
年800万円超の所得 | 7.2% (4.3%) |
6.0% (3.1%) |
4.8% (1.9%) |
|
地方法人特別税 | 67.4% | 93.5% | 152.6% |
(※1) 所得割の括弧書きの税率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率。
(※2) 3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人の所得割に係る税率については、軽減税率の適用はない。
〇 平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。
【資本割の課税標準の見直し】
改正前 | 改正案 | |
資本割の課税標準 | 資本金等の額 | 資本金等の額 又は 「資本金+資本準備金」の いずれか大きい額 |
(※) 法人住民税の均等割の税率区分の基準である資本金等の額についても同様の措置が講じられる。
【付加価値割における所得拡大促進税制の導入】
適用要件 | 控除額 |
① 雇用者給与等支給増加額≧基準雇用者給与等支給額×3%~5%(※1) 雇用者給与等支給増加額=雇用者給与等支給額(※2)-基準雇用者給与等支給額(※3) ② 雇用者給与等支給額≧前事業年度の雇用者給与等支給額 ③ 平均給与等支給額(※4)>前事業年度の平均給与等支給額 |
雇用者給与等支給増加額 |
(※1) 以下の事業年度の区分に応じて3%~5%となる。
・平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度:3%
・平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度:4%
・平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度:5%
(※2) 損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額
(※3) 基準事業年度(平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の直前事業年度)の雇用者給与等支給額
(※4) 雇用者1人当たりの月平均給与額
〇 平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。
【外形標準課税の拡大に伴う負担増の軽減措置の導入】
<事業税額から控除する金額>
平成27年度 | 平成28年度 | |
付加価値額が30億円以下の法人 | (改正後の税率に基づく事業税-平成27年3月31日現在の税率に基づく事業税)×1/2 | (改正後の税率に基づく事業税-平成28年3月31日現在の税率に基づく事業税)×1/2 |
付加価値額が30億超 40億円未満の法人 |
(改正後の税率に基づく事業税-平成27年3月31日現在の税率に基づく事業税)×(付加価値額に応じて1/2~0) | (改正後の税率に基づく事業税-平成28年3月31日現在の税率に基づく事業税)×(付加価値額に応じて1/2~0) |
(※1) 平成27年度:平成27年4月1日以後開始事業年度 平成28年度:平成28年4月1日以後開始事業年度
(※2) 付加価値額が30億円以下の法人は1/2、30億円超40億円未満の法人は付加価値額に応じて1/2~0となる。
(※3) 平成27年度と平成28年度の課税標準は同額と仮定している。
〇 平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。
2. 実務上の留意点
- 付加価値割における所得拡大促進税制については、①適用要件が法人税における雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度(所得拡大促進税制)と同様のものとなっており、国外の事業所に勤務する雇用者に対する給与等や、法人の役員及びその役員の特殊関係者(親族など)に対する給与等の額は対象とならず、②賃金抑制防止措置としての雇用安定控除と同種の制度であることから、両制度の適用関係について調整措置がある。
- 自己株式の取得や組織再編により、著しく資本金等が減少しても「資本金+資本準備金」相当額までは、資本割が課税される
(法人住民税についても同様に、「資本金+資本準備金」の基準に対応する均等割が課される)。 - 税負担軽減措置については時限立法であり、①付加価値割における所得拡大促進税制の適用期間は3年間、②負担変動の軽減措置の適用期間は2年間となっている。
3. 今後の注目点
- 資本割の課税標準の改正の実施時期は、大綱上明確になっていないため、今後確認が必要である。
- 住民税均等割の資本金等の無償増減資に関する加減算の措置の内容(事業税の資本割の増減資と同様の措置となるか)。
- 付加価値割における所得拡大促進税制と雇用安定控除との調整措置の方法。
- 付加価値額が30億円超40億円未満の法人に対する外形標準課税の拡大に伴う負担増の軽減措置における付加価値額に応じた控除割合。
- 平成27年度税制改正で見送られた中小法人への外形標準課税の適用拡大。
内容につきましては、「平成27年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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