出国時課税制度の創設

速報 平成27年度(2015年度)税制改正解説

1. 改正の概要

  • 時価1億円以上の「有価証券等」・「未決済デリバティブ取引等の含み損益」を有する居住者が国外転出する際には、国外転出時に、有価証券等の譲渡又は未決済デリバティブ取引等の決済をしたものとみなして、未実現の含み益等に対して所得税を課税する制度が創設されます。
  • 出国時課税制度による課税について、納税猶予制度(最長10年)が創設されます。

(1) 出国時課税制度の概要

日本居住者が、有価証券等のキャピタルゲインが非課税となる国に移住することで税負担を回避する行為を防ぐため、出国時に課税する制度が創設される。なお、譲渡所得としての課税が想定されるが、対象取引等によっては事業所得や雑所得として課税される。

23i02図1

※ 出国時課税の対象者

  • 国外転出時の有価証券等の時価及び未決済デリバティブ取引等の含み損益の合計が1億円以上である者
    (納税管理人を定めていない場合には国外転出予定日の3ヶ月前の日で金額の判定を行う)
  • 国外転出前10年以内に通算して5年超居住者である者

〇 平成27年7月1日以後に国外転出する場合に適用される。

 

  • 有価証券等とは、株式、投資信託の受益証券、国債、地方債、社債等又は匿名組合契約の出資持分をいう。なお、未上場株式や外国法人の株式も有価証券等の範囲に含まれる。
  • 国外転出後5年を経過する日までに帰国した場合において、国外転出時から引き続き有していたものについては、更正の請求により課税の取消を受けることができる。
  • 出国時課税対象者から贈与、相続又は遺贈により非居住者に有価証券等又はデリバティブ取引等が移転する場合にも、同様に含み益等に課税される。
  • 住民税については制度創設されていないが、引き続き検討項目とされている。

 

(2) 出国時課税制度にかかる納税猶予制度の概要

含み益に対する課税であるため、納税者に担税力がないことを考慮して、納税猶予制度が創設される。

納税猶予の期限は、原則として、国外転出の日から5年を経過する日(同日前に帰国する場合は、同日と帰国日から4ヶ月を経過する日のいずれか早い日)までとなる。ただし、申請により最長10年まで延長できる。

納税猶予制度の要件

納税者が以下のすべての要件を満たす場合に、納税猶予制度が適用される。

  • 国外転出日の属する年分の確定申告書に、納税猶予の適用を受けようとする旨の記載をすること
  • その確定申告書の提出期限までに、納税猶予分の所得税額に相当する担保を提供すること
  • その確定申告書の提出期限までに、納税管理人の届出をすること

〇 平成27年7月1日以後に国外転出する場合に適用される。

 

  • 納税猶予を受けている者は、納税猶予の期限までの間、各年末における有価証券等及び未決済デリバティブ取引等の所有に関する届出書を、その翌年3月15日までに、税務署長に提出しなければならない。
  • 納税猶予の期限の到来による所得税を納付する場合は、猶予期間に係る利子税が課される。
  • 納税猶予期間中は、相続税又は贈与税の納税義務の判定に際して居住者とみなす。
  • 納税猶予期間中に、有価証券等の譲渡又は未決済デリバティブ取引等の決済をした場合には、譲渡等があった部分については、譲渡等があった日から4ヶ月を経過する日をもって納税猶予に係る期限とする※。

※ 譲渡等をした金額が国外転出時の金額より下落した場合には、更正の請求により所得税額を減額できる(納税猶予期間満了時においても同様)。

 

2. 実務上の留意点

  • 納税猶予を適用する場合には、非居住者で日本国内での確定申告が不要な場合であっても、毎年届出書を提出しなければならない。
  • 国外転出後10年を経過する日までに帰国する予定がない場合には、含み益等に対して課税が生じることとなるため、利子税と今後の値上がり等を踏まえ、出国前に譲渡等を検討する必要がある。

 

 

 

内容につきましては、「平成27年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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