収益の認識等について

速報 平成30年度(2018年度)税制改正解説

1. 改正の概要

収益認識に関する会計基準(案)の公表を受け、法人税における収益認識等について下記の改正が行われる。

  • 法人税における収益認識等について、収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される。
  • 返品調整引当金制度及び延払基準(長期割賦販売等)が、廃止となる。
内容 改正前 改正案
① 収益認識時の
価額
• 法令上規定なし

• 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする。
(資産の販売若しくは譲渡時の価額)
原則として資産の引渡しの時における価額 ※

(役務の提供時の価額)
通常得るべき対価の額に相当する金額 ※

※ 貸倒れ又は買戻しの可能性がある場合においても、その可能性がないものとした場合の価額とする。

• 資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に係る収益の額を実質的な取引の単位に区分して計上できる。
また、値引き又は割戻しについて、客観的に見積もられた金額を収益の額から控除することができる。

② 収益の認識
時期
• 法令上規定なし
(一部法人税基本通達おける規定はあり)

[原則]
• 目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の益金の額に算入する。

[例外]
• 一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、上記引渡し等の日に近接する日の属する事業年度の収益の額として経理した場合、上記引渡し等の日にかかわらず、原則として当該事業年度の益金の額に算入する。

③ 返品調整
引当金
• 出版業等のうち、棚卸資産について一定の買戻し契約を結んでいるものが、その買戻し特約に基づく買戻しによる損失の見込み額として損金経理したものは、返品調整引当金損金算入限度額に達するまでの金額を損金の額に算入する。

• 返品調整引当金制度は廃止となる。

[経過措置]
• 対象:平成30年4月1日において返品調整引当金制度の対象事業を営む法人
• 平成33年3月31日までに開始する各事業年度
⇒ 現行どおりの処理が可能
• 平成33年4月1日~平成42年3月31日までに開始する各事業年度
⇒ 現行法による損金算入限度額に対して1年ごとに10分の1ずつ縮小した額の引当てを認める等

④ 長期割賦販売等の
延払基準
• 長期割賦販売等に該当する資産の販売をした場合に、その資産の販売等に係る収益の額及び費用の額について、その目的物又は役務の引渡し等を行った事業年度以後に延払基準の方法により経理したときは、当該各事業年度の益金の額及び損金の額に算入する。

• 長期割賦販売等の延払基準は廃止となる。
(注)消費税法においても長期割賦販売等の延払基準による計算制度は廃止となる。

[経過措置](消費税法も同様)
• 対象:平成30年4月1日前に長期割賦販売等に該当する資産の販売等を行った法人
• 平成35年3月31日までに開始する各事業年度
⇒ 現行どおりの処理が可能
• 平成30年4月1日以後に終了する事業年度については、延払基準の適用をやめた場合の繰延割賦利益額を10年均等で収益計上する
(注)ファイナンス・リース取引については現行どおりとする(消費税法も同様)

 

2. 実務上の留意点

• 長期割賦販売等の延払基準の廃止
延払基準を適用している法人について、従来よりも益金の認識時期が早くなることとなり、実際に代金が入金されるよりも前の段階で課税が生じることとなる。

3. 今後の注目点

法人税法においては、収益認識等について法令上明確化される一方で、消費税法については大綱の記載が長期割賦販売等の延払基準の廃止のみの記載であるため、今後の取扱いが注目される。

 

 

内容につきましては、「平成30年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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