恒久的施設(PE)関連規定の見直し

速報 平成30年度(2018年度)税制改正解説

1. 改正の概要

恒久的施設(PE)の範囲が国際的スタンダードに合わせて整備される。
PEとは、事業を行うための施設等一定の場所をいう。日本国内で事業を行う外国法人は日本国内のPEを通じて事業を行えば、日本で行う事業から生じた所得に対して日本で課税される。
近年、進出先国でPEの定義に抵触しない活動のみを行い、PEに該当することを人為的に回避する行為(PE認定回避)が国際的な問題となっており、BEPS行動7において、PE認定回避の防止措置が盛り込まれた。
今年度改正では、従来対応できなかったPE認定回避に対処するため、また、BEPS行動7に対応するためPEの定義が見直される。

(1) PEの範囲

種類 改正前のPEの定義 改正案 改正の理由
支店PE
  • 支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫、その他事業を行う一定の場所
  • 保管、展示、引渡し等を行うことを目的とした場所であっても、その機能が事業遂行上準備的・補助的な機能でない場合はPEに該当
  • 準備的・補助的活動を実質的に判定するため
  • ただし、保管、展示、引渡しなどの準備的・補助的活動のみを行う場所を除く
  • 上記の判定の結果、PEに該当しないとされた場所であっても、非居住者等(注1)と密接に関連する者(注2)がその場所(その密接に関連する者のPEに該当)において、一体的な業務の一部として準備的・補助的な機能を果たしている場合にはその非居住者等のPEに該当
  • 契約を細分化することによるPE認定回避に対応するため
建設PE 建設、据付け、組立て等、建設作業等のための役務提供を1年を超えて行う建設作業場 PE認定回避を主たる目的として、人為的に契約期間を分割した場合は、分割された期間を合計して1年超の判定を行う 契約期間を細分化することによるPE認定回避に対応するため
代理人PE
  • 常習代理人
    非居住者等のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、その権限を継続的に又は反復して行使する者
  • 常習代理人
    左記の範囲に、以下を追加
    非居住者等の資産の所有権の移転に関する契約を反復して締結し、又は、反復して契約締結のための主要な役割を果たす者
  • 販売委託契約(コミッショネア契約)によるPE認定回避に対応するため
  • 在庫保有代理人
    非居住者等のために在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者
  • 在庫保有代理人
    規定を削除
  • OECDモデル租税条約と平仄を合わせるため
  • 注文取得代理人
    一の非居住者等のために継続的に又は反復して注 文の取得等をする者
  • 注文取得代理人
    規定を削除
  • 同上
  • ただし、独立代理人(その事業に係る業務を、非居住者等に対して独立して行い、かつ、通常の方法により行う代理人等)に該当する場合を除く
  • 独立代理人の範囲から、専ら又は主として一又は二以上の自己と密接に関連する者(注2)に代わって行動する者を除外
  • 関連企業等の指示に従って行動する独立代理人は、非居住者等に対して独立して業務を行っていることにはならないため

(注1)非居住者等・・・非居住者又は外国法人
(注2)密接に関連する者・・・その個人又は法人との間に直接・間接の持分割合50%超の関係その他の支配・被支配の関係にある者

(2) 租税条約上のPEの定義と異なる場合の調整規定等の整備

わが国が締結した租税条約において、国内法上のPEと異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける非居住者等については、その租税条約上のPEを国内法上のPEとする。

2. 適用時期

(1) 国税

  • 所得税 平成31年分以後の所得税について適用する。
  • 法人税 平成31年1月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用する。

(2) 地方税 

  • 個人住民税 平成32年度分以後の個人住民税について適用する。
  • 法人住民税及び事業税 平成31年1月1日以後に開始する事業年度分の法人住民税及び事業税について適用する。

3. 実務上の留意点

PEなければ課税なしという基本的な考え方は従来と同様であるが、PEの範囲が拡大されるため新たにPEに該当する倉庫等が無いか検討が必要である。

4. 今後の注目点

改正後は、PEの判定時に実質的な判定が必要となってくるが、具体的にどのように判定するのかについて今後の情報を待つ必要がある。

 

 

内容につきましては、「平成30年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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