外国子会社合算税制(タックスヘイブン税制)の見直し
速報 平成30年度(2018年度)税制改正解説
1. 改正の概要
海外企業グループ買収後の資本関係整理に伴って生じる一定の株式譲渡益が、合算対象から除外される。
海外企業グループ買収後の資本関係整理に伴う株式譲渡益は、もともとグループ外にあった外国法人の株式の含み益に起因する譲渡益であるから、日本の税源を侵食していないと考えられるため今年度改正により合算対象から除外されることとなった。
例えば下図のケースにおいて、改正前はペーパーカンパニー等であるA社で生じたB社株式譲渡益は、合算課税の対象となるが、改正後は合算対象から除外される。
項目 | 内容 |
① 株式の譲渡を行う法人 | 特定外国関係会社※1、または、対象外国関係会社※2(以下「特定外国関係会社等」という) ただし、一定の内国法人が株主等であるものを除く。 |
② 対象株式等 | 外国関係会社※3(特定外国関係会社等に該当するものを除く。)の株式等で①の法人が特定関係発生日※4に有するものをいう。 |
③ 譲渡の要件 | ・外国関係会社に該当することとなった外国法人の統合に関する基本方針及び統合に伴う組織再編の実施方法等を記載した計画書に基づいて、 ・①の法人に係る内国法人又は他の外国関係会社(特定外国関係会社等を除く。)に対して、 ・①の法人が特定関係発生日から2年以内※5に行う株式等の譲渡が対象 |
④ 合算対象から控除する金額 | 対象株式等の譲渡による利益の額を合算対象額から控除する。ただし、対象株式等を発行した外国関係会社の合併、解散による残余財産の分配等の事由に伴って生じる譲渡利益を除く。 |
⑤ その他適用要件 | 譲渡の日から2年以内に①の法人の解散が見込まれること等 |
※1 特定外国関係会社・・・外国関係会社のうち、ペーパーカンパニー、事実上のキャッシュボックス、又はブラックリスト国に所在するものをいう
※2 対象外国関係会社・・・外国関係会社のうち、経済活動基準を満たさないもの(特定外国関係会社を除く。)をいう
※3 外国関係会社・・・日本居住者・内国法人等が、合計で50%超の持分を直接・間接的に保有している外国法人をいう
※4 特定関係発生日・・・日本居住者・内国法人等による直接・間接の株式保有割合等が50%を超えることとなった日
※5 平成30年4月1日から平成32年3月31日までに開始する各事業年度については、特定関係発生日以後5年を経過する日までの期間内の日を含む各事業年度
合算課税の対象となる金額(課税対象金額)の計算
本年度改正により適用対象金額から前項の株式譲渡益が控除されることとなる。
2. 適用時期
外国関係会社の平成30年4月1日以後開始する事業年度から適用される。
3. 実務上の留意点
日本企業が海外企業グループを買収した場合、今後公表される詳細な要件を考慮して、組織再編の計画を立てる必要性がある。要件の中には、一定の期間内に株式等譲渡を行うなど、今後の海外企業グループの組織再編計画へ影響を与える項目がある。
4. 今後の注目点
- 前項の表の①株式の譲渡を行う法人の要件にある「一定の内国法人が株主等」についての具体的な内容及び範囲。
- 改正後、具体的に適用できる条件等について、今後の詳細な情報を待つ必要がある。
内容につきましては、「平成30年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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