農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し
速報 平成30年度(2018年度)税制改正解説
1. 改正の概要
(1)一定の貸付けがされた生産緑地に係る納税猶予の適用拡大(相続税)
農業従事者の減少・高齢化が進む中、限られた資源である都市農地の有効活用のため、都市農地の貸借の円滑化に関する法整備(都市農地の貸借の円滑化に関する法律(仮称)、特定農地貸付法)が進んでいる。
これを受け、今年度改正では、農地等の相続税の納税猶予制度につき、一定の貸付けがされた生産緑地についても納税猶予を適用する措置が講じられる。
関係法令 | 一定の貸付け | 内容 |
都市農地の貸借の円滑化に関する法律(仮称) | 認定事業計画(仮称)に基づく貸付け | 市町村による事業計画の認定を受けた農業従事者に対し、賃借権等が法定更新されない農地を貸付ける制度 |
特定都市農地貸付け(仮称)の用に供されるための貸付け | 市民農園の開設のため、市町村及び農地所有者と協定を締結した者に対し、農地所有者が農地を直接貸付ける制度 | |
特定農地貸付法 | 地方公共団体又は農業協同組合が行う特定農地貸付けの用に供されるための貸付け | 地方公共団体等が実施主体となり、農地所有者から借受けた農地を利用者に使用させる制度 |
地方公共団体及び農業協同組合以外の者が行う特定農地貸付けで一定のものの用に供されるための貸付け | 農地所有者が市町村と貸付協定を結んで実施主体となり、所有する農地を利用者に使用させる制度 |
(2)三大都市圏の特定市以外の生産緑地に係る営農継続要件の見直し(相続税)
三大都市圏の特定市以外の生産緑地については、20年の営農継続により猶予中の相続税が免除されていたが、今年度改正により、終身の営農継続が要件とされる。
(3)生産緑地法・都市計画法の改正に伴う措置(相続税・贈与税)
生産緑地法が施行された1992年に指定を受けた生産緑地(約1万ヘクタール)について、30年間の転用制限が切れ、大規模な宅地転用が懸念される「2022年問題」に対応するため、平成29年4月に生産緑地法・都市計画法が改正された。
これを受け、今年度改正では、農地等の相続税・贈与税の納税猶予制度につき、次の措置が講じられる。
① 特例農地等の範囲の拡大
- 生産緑地の指定を延長された「特定生産緑地」である農地等
- 都市計画法の改正により創設された「田園住居地域」にある農地(三大都市圏の特定市に限る)
② 特定生産緑地の指定(又は指定期限の延長)がされなかった生産緑地については納税猶予の適用範囲外となるが、 現に適用を受けている納税猶予に限り、その猶予を継続する
2. 適用時期
上記1.(1)(2)については都市農地の貸借の円滑化に関する法律の施行日以後に相続又は遺贈により取得する農地等に係る相続税について適用する。
同日前に相続税の納税猶予の適用を受けている者については、選択により上記1.(1)の適用ができることとされ、その場合には、上記1.(2)についても適用される。
3. 実務上の留意点
上記1.(1)一定の貸付けがされた生産緑地に係る納税猶予の適用拡大、(2)三大都市圏の特定市以外の生産緑地に係る営農継続要件の見直しについては、相続税の納税猶予に関する改正で、贈与税の納税猶予には適用されない。4. 今後の注目点
都市農地の貸借の円滑化に関する法律の詳細内容及び成立・施行スケジュール
内容につきましては、「平成30年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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