グリーンカードを保有したまま日本へ帰国した場合の注意点として米国におけるグリーンカード保有者としての所得税申告義務及び情報開示義務の履行が挙げられます。
1. 所得税申告義務について
日本では、居住者と非居住者を国内における住所又は居所の有無等により判定します。一方で、米国では、個人を米国市民と外国人に区分し、さらに、その居住形態により外国人を米国居住者と米国非居住者に区分して判定します。米国居住者とは、外国人のうち米国永住権を有している者又は滞在日数等に応じた要件を満たす者をいいます。したがって、グリーンカードを保有している場合は、米国における滞在日数にかかわらず米国居住者に該当します。また、米国非居住者の所得税の課税範囲は米国内源泉所得に限定されますが、一方で、米国居住者の課税範囲は全世界所得です。したがって、グリーンカードを保有している場合は、例えば、日本に帰国し日本の勤務先からしか給与を受け取っていない場合であっても、日本の国内源泉所得も米国の所得税の課税対象に含まれます。その結果、課税所得が基礎控除額を上回る場合には、日本への帰国後であっても居住者として確定申告書を提出する必要があります。
2. 情報開示義務について
米国居住者は、外国金融資産等の残高が一定の基準値を上回る場合、外国法人株式を一定の割合以上保有する場合、非居住外国人から相続又は贈与により一定の金額を上回る財産を取得した場合等の要件に該当した場合には、外国金融資産等について、IRS又はFinCENに情報開示を行う必要があります。したがって、例えば、日本に帰国した後であっても日本の金融機関等の口座に一定の基準値を上回る残高を保有している場合には、その口座の残高等に関する情報を毎年開示する必要があります。これらの開示義務を怠った場合には、ペナルティが課される可能性があります。
3. 所得税申告及び情報開示が漏れていた場合の是正手続きについて
日本では、所得税の申告書の更正期限は、原則として5年です。一方で、米国の所得税の申告書の更正期限は、無申告の場合にはその期限の定めがありません。したがって、申告義務があったにもかかわらず申告していなかった場合は、申告しない限り時効により免責されるといったことはありません。その一方で、救済制度も設けられています。所得税申告及び情報開示が漏れていた場合においても、その申告漏れが故意ではなかったことを証明した場合には、一定期間の申告をすることで、ペナルティの軽減とそれ以前の申告義務については免責を受けられる制度もあります。既に日本に帰国している場合で過年度の所得税申告及び情報開示が漏れていた場合には、是正制度の活用もご検討ください。
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