米国デラウェア州に設立されたリミテッドパートナーシップ(LPS)が日本の税法上「法人」に該当するか否かが争われていた事案で、最高裁は17日、LPSは日本の税法上の法人に該当するという初判断を示しました。
LPSとは、ゼネラルパートナー(無限責任組合員)とリミテッドパートナー(有限責任組合員)により構成される事業体をいいます。ゼネラルパートナーはその事業について無限責任を負いますが、リミテッドパートナーの責任は投資金額の範囲内に限定されます。日本におけるLPSは「投資事業有限責任組合契約に関する法律」に基づく組合をいいますが、本事案で問題となっているのは、海外の法律により作られたLPSです。海外の法律により作られたLPSが日本の税法上の法人に該当するのかどうか、明文上の定めがないため、裁判により争われてきました。
海外の法律により作られたLPSが日本の税法上の法人に該当するのであれば、そのLPSの活動により生じた損失は、法人の損失になります。一方、LPSが日本の税法上の法人に該当しないのであれば、その損失は、LPSを構成するパートナーに帰属するため、パートナー個人の所得と合算することができます。
本事案は、不動産事業を行う米国デラウェア州のLPSに投資した日本の投資家が、事業の損失を自身の他の所得から差し引いて所得税を申告したところ、税務当局より「LPSは法人であり、その事業の損失は個人所得と相殺できない」として追徴課税されたため、課税取り消しを求めて提訴したものです。
裁判長は、「我が国においては、ある組織体が権利義務の帰属主体とされることが法人の最も本質的な属性」であるとして、海外の法律により作られた事業体の法人該当性については、「権利義務の帰属主体であると認められるか否か」を検討するという初判断を示しました。その上で、投資家側の主張を認めた一、二審判決を破棄し、同州で設立されたLPSについて「法人に該当する」と結論づけています。
海外の法律により作られたLPSの法人該当性をめぐっては、他にも裁判で争われた事案があり、高裁で判断が分かれてきました。今後はこの最高裁で示された基準により判断されることになります。