海外デスクレポート

2025年2月7日

増値税法について (中国)

増値税法について (中国)

2024年1225日に第十四期全国人民代表大会常務委員会第十三次会議で「中華人民共和国増値税法」が可決され、202611日から正式に実施されます。

増値税は日本の消費税に相当する税目で、中国の全体税収の約38%を占め、中国の最大の税収源です。これまでの増値税は「中華人民共和国増値税暫行条例」及びそれに関連する政策に基づいて運用されていましたが、経済の発展に伴い、税金の徴収・納付の制度化を促進するために、増値税を法制化し正式に立法されました。

基本的に増値税法は「暫行条例」の内容を踏襲していますが、いくつかの変更点もありますので、今回は主な変更点およびその影響を紹介します。

 

現行政策 増値税法 備考

第十二条 中国国内におけるサービス、無形資産または不動産の販売とは:

1. サービス(不動産賃貸を除く)または無形資産(自然資源使用権を除く)の販売者または購入者が中国国内にあること;

・・・

第十三条 以下の場合は中国国内におけるサービスまたは無形資産の販売に該当しない。

1.国外組織または個人が国内組織または個人に完全に国外で発生するサービスを販売する場合;

・・・

※財税〔201636号より抜粋

第四条 中国国内に発生する課税取引とは、以下の場合を指す。

1. 貨物を販売する場合は、貨物の発送地または所在地が中国国内にあること;

2. 不動産を販売または賃貸する場合および自然資源の使用権を譲渡する場合は、不動産および自然資源の所在地が中国国内にあること;

3. 金融商品を販売する場合は、その金融商品が国内で発行される、または販売者が中国国内にあること;

4. 本条第二項、第三項を除き、サービスや無形資産を販売する場合は、そのサービスや無形資産が国内で消費される、または、販売者が国内にあること。

【金融商品の国内取引での判定基準】

金融商品の販売について、現行政策では具体的な規定がなく、サービスと同じ基準を使うのが一般的ですが、政策に対する見解が分かれており、判定が曖昧です。

増値税法では、金融商品取引に明確な判定基準を定めました。

第四条 組織または個人事業者が以下の行為を行う場合は、貨物の販売とみなす。

1. 貨物を他の組織または個人に渡し、代理販売してもらう;

2. 貨物を代理販売する;

3. 2. 以上の機構を設置し、一括精算を実施する納税者が、貨物を1つの機構から他の機構に移し、販売に用いる。ただし、機構が同一県(市)内に設置されている場合を除く;

4. 自製品または委託加工貨物を非増値税課税項目に用いる;

5. 自製品または委託加工貨物を福利厚生または個人消費に用いる;

6. 自製品、委託加工または購入した貨物を投資として他の組織または個人事業者に提供する;

7. 自製品、委託加工または購入した貨物を株主または投資者に分配する;

8. 自製品、委託加工または購入した貨物を他の組織または個人に無償贈与する。

※中華人民共和国増値税暫行条例実施細則より抜粋

第五条 以下の場合は課税取引とみなし、本法に従い申告納税しなければならない。

1. 組織または個人が自製品または委託加工貨物を福利厚生または個人消費に用いる。

2. 組織または個人が貨物を無償譲渡する。

3. 組織または個人が無形資産、不動産、金融商品を無償譲渡する。

【みなし販売の範囲】

一目でわかるほど、増値税法のみなし販売の範囲が大幅に縮小しました。

特に現行政策の第3項がなくなり、同一法人内、同一県(市)内の異なる拠点間の貨物の移動がしやすくなりました。

第七条 納税者が正当な理由なく、貨物または課税労務を著しく低い価額で販売する場合は、管轄税務署がその販売価額を見直すことができる。

※中華人民共和国増値税暫行条例より抜粋

第二十条 正当な理由なく、販売価額を著しく高くまたは低く設定する場合は、管轄税務署が関連法令により、その販売価額を見直すことができる。

【販売価額の見直し】

現行政策では販売価額が著しく低い場合のみですが、増値税法では販売価額が高い場合も見直すことができます。

これは企業が意図的に販売価額を高く設定し、不当に税制優遇を利用することを防ぐためです。

第四条 当期仕入税額が当期売上税額を上回る場合は、その差額を翌期に繰り越して控除することができる。
※中華人民共和国増値税暫行条例より抜粋

第二十一条 当期仕入税額が当期売上税額を上回る場合は、その差額を国務院の規定に従い、翌期へ繰り越すか、還付申請を選択することができる。

【仕入税額還付申請】

還付申請という選択肢が増えたことで、企業のキャッシュフローの改善が期待できます。 

 

※ 上記条文はすべて抜粋後の条文になります。

※ 出典

 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
  • 大井 高志

    この記事の著者

    大井 高志
    税理士法人山田&パートナーズ  海外事業部 パートナー
    亜瑪達商務諮詢(上海)有限公司 総経理
    税理士・公認不正検査士

    2013年山田&パートナーズ入所。大手金融機関への出向後、2016年より上海へ赴任。中国系会計事務所への出向を経て2019年より現職。中国・香港・台湾における組織再編、進出・撤退支援、M&A関連業務、コーポレートガバナンス、不正調査対応、内部統制支援等のコンサルティング業務に従事。

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