米国では、1986年の税制改革法以来となる大規模な税制の見直しが行なわれようとしています。 今回は現地に駐在している弊法人税理士の鈴木隆司より、米国の税制改正に関する最新の情報をお伝えします。
===== 米国時間2017年12月15日、両院協議会は先にそれぞれ可決されていた米国税制改革(「The Tax Cuts and Jobs Act」)上院案及び下院案を両院一致法案としてまとめ、その内容を公表しました。上院及び下院が12月20日に両院一致法案に関する採決を可決し、22日にトランプ大統領が署名し、米国の法律として成立しました。改正に関する主な内容は下記のとおりです。
【個人所得税】
○現状の7税率区分を10, 12, 22, 24, 32, 35, 37%の7区分に再編(現状最高税率39.6%)
○基礎控除額を現行の2倍となる個別申告$12,000、夫婦合算申告$24,000に引き上げ
○固定資産税、州・地方所得税、または売上税を$10,000まで個別控除容認(現状は制限なし)
○子女税額控除を現状の2倍となる$2,000に引き上げ、そのうち$1,400まで還付容認
○住宅ローン金利個別控除を、新規取得コスト$750,000まで認める
○オバマケアの保険加入義務の廃止
○個人所得税代替ミニマム税(AMT)は免除対象拡大の上継続 【法人税及び事業体に対する課税】
○2018年から法人税率21%(現状35%)
○個人オーナーが自営業
・パススルー主体経由で認識する事業所得の20%非課税
・2018年1月1日から2025年12月31日までの間に開始する事業年度で適用
・人的役務に基づく事業は対象外
○固定資産の100%初年度償却
・中古資産を含む ・公共ガス水道電気事業に使用される資産は対象外
・2017年9月28日から2022年末までに取得かつ事業供用される資産に適用
・2023年は80%の償却となり以降毎年20%減額され2027まで段階的削減
○法人代替ミニマム税(AMT)撤廃
○2018年および以降の課税年度に発生する繰越欠損金の繰越期限廃止・繰戻撤廃
・2018年1月1日以降開始年度より繰越欠損金の控除制限は課税所得の80% (2018年1月1日以降開始年度に発生する繰越欠損金に適用)
○支払利子の損金算入制限
・調整課税所得の30%を超えるネット支払利息損金不算入
・調整後課税所得は2018年~2021年まではEBITDA、2022年および以降はEBITベース
・直近過去3年間の平均総収入額が$25,000,000の小規模事業者は適用除外
・2018年1月1日以降開始年度より適用開始
【国際課税】
○海外子会社(10%以上投資先)からの配当非課税(テリトリアル課税制度)
○未配当原資累積額に一括課税
・15.5%(事業資産に再投資されているケースは8%)
・強制みなし配当課税の対象となる保留所得の判定基準日は 2017年11月2日又は2017年12月31日時点の利益剰余金でいずれか高い金額
・8年間の分割納付可能
○多国籍企業グループに「Base Erosion Minimum Tax」
・グループ売上$500,000,000以上(50%資本関係グループ総額)および Base Erosion Paymentが全体の費用の4%以上の米国法人が対象
・Base Erosion Paymentは米国法人が米国外関連会社に行う費用項目 および資産取得支出(売上原価は対象外)
・通常の課税所得にBase Erosion Paymentを加算処理して調整課税所得を算定
・調整課税所得に10%(2018年は5%、2026年からは12.5%)乗じた金額が 通常の税額を超える金額が「Base Erosion Minimum Tax」
【遺産税】
○非課税枠を現在の1人あたり$5,000,000から$10,000,000に拡大
○廃止はせずに継続 ※PDF資料は、こちらよりご覧いただけます。
<照会先> 鈴木 隆司 Ryuji Suzuki 日本国税理士・米国税理士(EA) Yamada & Partners USA, Inc. 11620 Wilshire Blvd. Suite900 | Los Angeles, CA 90025 310 254 8215 direct