国税庁は、「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」を公表しました。これによりますと、大口・悪質な不正計算が想定されるため調査必要度が高いとされた6万2千件(前年度比+52.3%)に実地調査した結果、総額7,801億円(同+29.4%)の申告漏れが発見されました。法人税と消費税を合わせた追徴税額は3,225億円(同+39.8%)にのぼります。いずれも前年度と比べると数字は増加していますが、1件当たりの追徴税額を見ると301万円(同△14.7%)と減少しています。
業種別にみると、法人税の不正発見割合の高い業種は、「その他の飲食」が36.2%とワースト1位となりました。次いで「廃棄物処理」29.4%、「中古品小売」28.7%の順となっています。
1件あたりの不正所得金額でみると、1位は「計量器、医療機械、理化学機械等製造」8,548万2千円、次いで「運輸附帯サービス」6,369万5千円、以下「鉄鋼卸売」5,882万2千円、「その他の対事業所サービス」4,332万5千円、「自動車・同付属品製造」4,129万2千円と続いています。
消費税では、実地調査件数が6万1千件(同+52.2%)、追徴税額は1,357億円(同+56.2%)となっています。
また、消費税の不正還付は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性が高い行為であるため、特に厳正な調査が必要であるとして、消費税還付申告法人に対する実地調査を5,810件(同+36.6%)実施し、563億円(同+51.5%)を追徴しました。そのうち、不正還付は138億円にのぼります。
ホームページには、主な不正の手口として、輸出物品販売場制度を悪用することで、国内売上を免税売上に仮装した事例(同約11億円)が紹介されています。
出典:国税庁「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」
現在、訪日外国人は商品を国外に持ち帰ることを条件に、消費税を免税された価格で商品を購入することができますが、この免税品が国外に持ち出されず、国内での転売が疑われるケースが多くみられます。
そこで政府は、2024年(令和6年)度税制改正において、商品購入時に消費税を払い、出国時に商品を確認してから払い戻す「リファンド型」の導入を検討しています。
改正が行われれば、国外に持ち出すことを確認して消費税を還付することになるため、輸出物品販売制度を悪用するケースは減少するかもしれません。